- 日程
- 2022年1月7日(金)
- 時間
- 16:00-
- 場所
- 南5号館5階 503CD大会議室
- 講師
- 中村 優男 氏( 理化学研究所 創発物性科学研究センター)
- お問い合わせ先
- 連絡教員:物理学系 佐藤 琢哉(内線2716)
量子物理学・ナノサイエンス第329回セミナー
概要
空間反転対称性が破れた物質では、光照射によって外部からのバイアスなしに直流電流が発生することが知られている。この電流発生の起源の一つとして、二次の非線形光学効果である「シフト電流」が注目を集めている。シフト電流は、光学遷移に伴う電子波動関数の幾何学的位相(ベリー接続)の変化によって生じる電流である。電場によって駆動される一般的なオーミック電流とは異なり、トポロジカルな起源を持つシフト電流は、結晶中の欠陥などによるキャリアの局在化の影響を受けにくい低エネルギー散逸性や、パルス光に対する超高速応答性を持つと考えられている。しかし、このようなシフト電流の特性を実験的に実証した例はなかった。
本セミナーでは、代表的な狭バンドギャップ強誘電体のSbSIにおいて、シフト電流が高い欠陥耐性を持つ低エネルギー散逸性の電流であることや、超高速のパルス光応答性を持つことを実験的に実証した結果を紹介する[1,2,3]。また、電子型強誘電性を示す有機電荷移動錯体のTTF-CAにおいて観測された巨大なシフト電流についても紹介する[4]。
- [1] M. Nakamura et al., Appl. Phys. Lett. 113, 232901 (2018).
- [2] H. Hatada, M. Nakamura et al., PNAS 117, 20411 (2020).
- [3] M. Sotome, M. Nakamura et al., PNAS 116, 1929 (2019).
- [4] M. Nakamura et al., Nat. Commun. 8, 281 (2017).
- 量子物理学・ナノサイエンス先端研究センター 主催
- 東京工業大学理学院・物理学系 共催