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近年、孤立量子系において量子純粋状態が熱力学に従う事が確立しつつある[1]。そういった系において量子エンタングルメントが熱力学的なエントロピーに対応する。従って、熱力学エントロピーの増大によって実現する熱平衡化は、量子力学から説明すると系全体に量子もつれが広がることで起こる現象と言うことが出来る。本研究では、熱平衡状態を表すような量子純粋状態における量子エンタングルメントの空間分布が単純なスケーリング則に従うことを講演する[2,3]。まず、熱力学系との厳密な対応が確立されている量子純粋状態であるcanonical thermal pure quantum state (cTPQ)に基づき、エンタングルメント・エントロピーの空間分布を表す一般的な関数を理論的に導出する。そして孤立量子系のエネルギー固有状態と定常状態とが持つ量子エンタングルメントの空間分布に対して、我々の導出した関数が共通してよく当てはまることを、数値シミュレーションを用いて確認する。さらに、得られた関数とその普遍性を利用し、Eigenstate thermalization hypothesis (ETH)相とMany-Body Localization (MBL)相の間の相転移が従来より良い精度で見積もれることを示す。熱平衡化した量子純粋状態の持つエンタングルエントロピーの空間分布は冷却原子系の実験において測定されており[4]、本研究は数値計算のみならず今後の実験データの解析にも使えると期待される。また、孤立系のエンタングルメントは近年、ブラックホールの情報消失問題など量子重力分野においても重要となっており、分野を超えた発展が期待される。
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更新日:2021.05.25