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左右対称性の破れ(カイラリティ)が誘導する物質機能の探索が活発な展開を見せている.磁性,光,弾性に対するカイラル効果のうち最も研究が遅れているのが(意外なことに)弾性である.本セミナーでは,カイラル結晶のフォノンスペクトルを《ミクロポーラ弾性論》を用いて記述する方法と物理的意義を述べる.この理論の本質は,原子スケールの剛体ブロックの並進(極性ベクトル)と回転(軸性ベクトル)を独立な自由度として扱い,これらの結合項(擬スカラー)を自由エネルギーに入れる点にある.これがカイラル項である.ここから導かれる弾性波の運動方程式を解くと,円偏波の左右に依存してフォノンバンドが分裂する.この分裂は,電子バンドのスピン依存ラシュバ分裂と同様のものであり,フォノンスピンに依存するバンド分裂とみなせる.このフォノンスペクトルは時間反転Tを破らずパリティPを破り,真のキラリティを持つ.さらに,ミクロな回転モードと並進モードの混成により超流動ヘリウム4の素励起に見られるロトンスペクトル様の分散曲線が現れる.我々の結果はNozieresが提唱したロトンの発現機構と調和している.
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更新日:2020.12.14