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フォノンを媒介とする超伝導体では,軽い元素ほど高い転移温度を持つ可能性があるため,水素および水素化物は高温超伝導体の候補として精力的に研究が進められてきた。なかでも硫化水素における高温超伝導の理論的予言およびそれを契機とした実験的発見により,近年盛んに理論実験両面からの探索が行われている。そのような状況のなか,2018年,LaH10においてTc~250Kという室温にせまるTcの超伝導が報告された[1,2]。この物質も理論的に予言されていたものの,実験的には理論予想より100GPa近くも低い圧力で安定化し超伝導が実現していた。この理由を解明できれば,より低い圧力での高温超伝導体探索につながると期待される。そこで我々は,水素の量子効果に着目して,この物質の安定化機構について解析した。その結果,一般的な断熱近似では対称性が低下した構造が安定化してしまうのに対し,水素の量子効果を考えると,より対称性の高い構造が安定となること,また,それによってTcの圧力依存性をほぼ完全に再現できることが分かった[3]。これは,今後,水素化物の超伝導探索において,量子効果を取り込むことが極めて重要であることを意味している。
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更新日:2020.07.27