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近年、強相関電子系物質を中心に、新しいタイプの光誘起現象が観測されている。それらは従来研究されてきた秩序の抑制や融解とは異なり、電荷の局在化(秩序の増大)[1,2]を示唆する現象であり注目を集めている。本研究では、エキシトニック絶縁体(EI)における光誘起現象について理論的に調べた。EIは、1T-TiSe2やTa2NiSe5などで発現していると考えられている。特に後者では、光によるギャップの増大が観測され[3]、EI特有の非平衡現象の可能性が議論されている。これを踏まえ、 EIを記述する二軌道ハバードモデルを用いて、平均場近似の範囲で光誘起ダイナミクスを計算した[4]。このモデルでは、軌道間相互作用U'により基底状態のEI相がBCS-BECクロスオーバーを起こすことが知られている。計算の結果、基底状態がBEC的なEI状態ではエキシトニック秩序パラメータの絶対値、つまりギャップが光照射により増大することが分かった。一方、BCS的なEI状態ではギャップは減少する。この特徴的な相違が、波数空間での秩序パラメータの位相の振舞いから理解できることを議論する。
更新日:2018.06.22