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1次元ボース気体で “前期熱平衡化現象 (prethermalization)” と呼ばれる準定常状態への緩和が実験で観測された[M.Gring et al., Science 337,1318 -1322(2012)]。前期熱平衡化現象とは、系が熱平衡状態に落ち着くよりもはるかに短い時間スケールで準定常状態に到達する 緩和現象のことである[J. Berges et al., Phys. Rev. Lett., 93, 142002(2004)]。前期熱平衡化はある程度一般的な系で生じる現象であると考えられているが、特に可積分系の前期熱平衡化は保存量の存在によって生じるという明確な描像がある。我々は準定常状態への緩和が初期エンタングルメントによって生じることを見つけた[E. Kaminishi et al., Nature Physics 11, 1050(2015)]。これまでの可積分系における保存量の存在では説明できない、新しい緩和機構である。
本発表では、実験と同じセットアップを理論模型で計算した方法やエンタングルメントによる緩和機構について詳しく説明する。
更新日:2018.06.21