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結晶中の電子スピンは,スピン軌道相互作用を通して結晶対称性を感じとることができる.左右対称性の破れた結晶(カイラル結晶)では,この結果としてスピンが左右いずれかのカイラリティを持ったらせん磁気構造が実現することがある.この磁気構造に磁場をかけるとカイラルソリトン格子という非線形の磁気テクスチャが現れる.この構造は非線形古典場理論であるカイラルサインゴルドン模型で記述され,モデルの単純さを超えた豊かな構造とダイナミクスを持つ.数理の面からは対称性や楕円関数論の格好の例題となる.物理の面からは凝縮系理論の様々な基礎概念と関連するだけでなく,情報転送や巨大スピン起電力などの機能性を発揮し得る.本講演では,カイラル磁性の面白さを(主に理論家を念頭に)お話ししたい.
更新日:2018.05.11