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半導体ナノ構造中における励起子は重心運動の閉じ込めを受ける。光の空間構造を無視する長波長近似が成り立つサイズでは、奇数次(n=1,3,5,…)の励起子のみが光学応答に寄与する[1]。しかし、高品質結晶において長波長近似が破綻するサイズ(可視光の波長程度)領域では、光の空間構造が現れ、奇数次(n=1,3,5,…)だけでなく偶数次(n=2,4,6,…)の励起子も光と長距離に渡り結合する。このサイズ領域では、位相整合の取れた励起子と光の相互作用体積の巨大化により、超高速光学応答が実現する[2]。また、近年、上記系の発光現象において従来の理解とは大きく異なる事例が報告された[3]。重要な特徴は、通常の発光では現れにくい高位準位からの発光が複数同時に現れ、双極子禁制遷移と考えられる準位からも信号が現れている点にある。またこれらは裸の励起子準位からではなく、光-励起子結合準位からの発光信号である点で興味深い。
本セミナーでは、上記の背景をふまえて、「高品質半導体薄膜における特異な励起子発光特性の理論解析」[4]、「1光子励起による上方変換発光の理論提案」[5]、「光捕集と励起子超放射による金属-半導体多層膜における高効率発光素子構造の提案」[6]に関する理論研究と、「10fs級超高速励起子発光の観測」と「室温超高速非線形光学応答の観測」に関する実験研究を紹介する。
更新日:2017.10.23