イベント・セミナー・講演会
大岡山キャンパス 本館2階 H284A 物理学系輪講室
反転対称性の破れた物質は近年の物質科学研究の中心舞台であり、磁気相、超伝導相、トポロジカル相などの新規な物質相や、そこでの特異な外場応答が大きな注目を集めている。一方で、反転対称性の破れに起因する興味深い性質は、最も基礎的な物性である電気伝導にも姿を現す。非相反電気伝導現象はその一つであり、電場の二次に比例した電流成分が存在することにより、電流方向によって異なる抵抗値や倍周波の出力信号が現れる現象であるが、これまで半導体ヘテロ界面やカイラルな分子系で報告されていた非相反性は微小であり、微視的な機構も解明されていなかった[1]。
本講演ではこれらの非線形伝導に関する研究を概観したのち、最近我々が行ったRashba系に現れる非相反電気伝導の計算と実験との比較[2]を通じて、非相反性の起源、増大の指針について議論を行う。加えて、非相反電気伝導をスピン流に拡張した我々の仕事も紹介する[3]。ここでは、Rashba系などのスピン運動量結合がある系で電場の二次に比例するスピン流が生成されることを示す。
[1] G. L. J. A. Rikken, et.al., Phys. Rev. Lett. 87, 236602 (2001). ; V. Krstić, et.al., J. Chem. Phys. 117, 11315 (2002). ; F. Pop, et. al., Nat. Commun. 5, 3757 (2014)
[2] T. Ideue, K. Hamamoto, S. Koshikawa, et.al., Nature Physics 13, 578 (2017)
[3] K. Hamamoto, M. Ezawa, K. W. Kim, T. Morimoto, N. Nagaosa (accepted in PRB)
更新日:2017.06.22