引力相互作用するフェルミ気体における異常コンダクタンス
- 日程
- 2017年4月25日(火)
- 時間
- 14:00 - 15:30
- 場所
- 大岡山キャンパス 本館2階 H284B 物理学系輪講室
- 講師
- 内野瞬氏(理化学研究所)
- お問い合わせ先
- 連絡教員:物理学系 西田祐介(内線3614)
量子物理学・ナノサイエンス第182回セミナー
概要
スイス連邦工科大学のTilman Esslinger教授の実験グループが冷却フェルミ気体を用いた2端子輸送デバイスを実現し、冷却原子系でメゾスコピック輸送現象が議論できるようになった[1]。最近では量子ポイントコンタクトを介した2端子コンダクタンスが自由フェルミ気体の場合で測定され、コンダクタンスの量子化(Landauer-Buttiker公式)が確かめられた[2]。
冷却原子系ではFeshbach共鳴を用いた原子間引力相互作用の操作により、系を超流動化させることができる。つまり、同一のセットアップでメゾスコピック超流動系が実現される。論文[3]ではユニタリー極限での輸送特性が調べられ、非線形なカレント・バイアス曲線が得られた。測定されたカレント・バイアス曲線は多重Andreev散乱によって説明できることが明らかとなっている。
最近では超流動転移近傍の輸送特性が調べられ、コンダクタンスの量子化が破れていることが確認された[4]。我々はこの現象を理解するため、熱浴の超流動揺らぎがコンダクタンスの量子化に与える影響を解析した。我々はpreformed pairの輸送がコンダクタンス量子化の破れの本質であることを指摘し、実験結果を説明できることを示した[5]。
本セミナーではこの結果を中心に議論したい。
- [1] J.-P. Brantut et al., Science 337, 1069 (2012);
D. Stadler et al., Nature 491, 736 (2012);
S. Krinner et al, Phys. Rev. Lett. 110, 100601 (2013);
J.-P. Brantut et al., Science 342, 713 (2013).
- [2] S. Krinner et al., Nature 517, 64 (2015).
- [3] D.Husmann, SU et al., Science 350, 1498 (2015).
- [4] S. Krinner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 113, 8144 (2016).
- [5] SU and M. Ueda, Phys. Rev. Lett. 118, 105303 (2017).
- ナノサイエンス・量子物理学国際研究センター 主催
- 東京工業大学理学院・物理学系、「ナノサイエンスを拓く量子物理学拠点」共催