イベント・セミナー・講演会

結晶金属のミクロ・ナノ領域の電子状態の完全解明へ向けて

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日程
2016年10月31日(月)
時間
13:30 -
場所
すずかけ台キャンパス別窓 大学会館集会室1
講師
菅滋正氏(大阪大学 産業科学研究所、ドイツJülich研究センター、マックスプランク微細構造物理学研究所(MPI-Halle))
お問い合わせ先

連絡教員

物理学系 平山博之(内線5637)
物質理工学院 中辻寛(内線5619)

菅滋正先生

菅滋正先生

菅滋正先生は、1973年に東京大学 大学院工学系研究科 博士課程を修了後、西ドイツ・マックスプランク固体研究所 研究員を経て、1975年より東京大学 物性研究所 助教授、1989年より大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授を歴任され、長らく固体の光物性、特にシンクロトロン放射光を用いた光電子分光による固体電子状態の研究に携わってこられました。現在は、大阪大学 産業科学研究所 招聘教授として、日本とドイツを行き来しながら、精力的に研究活動を続けておられます。

量子物理学・ナノサイエンス第31回特別セミナー

モーメンタム・マイクロスコピーによる2次元波数空間の超高精度スピン偏極・角度分解光電子分光

概要

この約20年間に角度分解光電子分光(ARPES)の手法により結晶固体金属電子状態の研究は飛躍的に発展した。光エネルギーhν=10-200 eVではFermi準位近傍の電子のARPES測定は表面敏感となるが、hν=500-1,000 eVではバルク敏感性が5割程度、さらにhν=6-8 keVではバルク成分が9割をも超えることが多い。一方でhν<10 eVでは物質依存性が高い。

近年、トポロジカル絶縁体の例に見られるようにスピン情報を測定する重要性が急増し、これまでのAuのMott検出器やWのSP-LEED検出器より百倍ほど感度の高いFe-OのVLEEDスピン検出器が実用化されるに至った。しかしながらその多くは低い検出効率のシングルチャネル測定であり依然として、とても長い計測時間が避けがたく表面劣化の問題があるほか、スピントロニクスに向けたミクロ・ナノ領域の測定が困難である。

2013年にドイツのMPI-Halleで開発完成したMomentum Microscope(MM)では光電子入力側に1)光電子顕微鏡(PEEM)を配置し、エネルギー分析は2)S字型タンデム配置に接続し収差補正のできる2つの静電半球型電子エネルギー分析器(HDAs)、3)出射(加・減速)レンズを経て4)2次元検出器で1万から4万チャネルの(kx,ky)ARPES像が同時計測できる。さらに3)と4)の間に5)45度入射・反射のAu/Ir(001)ミラーを挿入し、これに電子を10.25と11.50 eVで入射した時に反射率のスピン依存性が逆転する事を利用してスピン偏極度Psを数万点の(kx,ky)で一気に計測できる。これによりスピン偏極2次元ARPES(SP-2D-ARPES)、つまりPs(kx,ky)測定が、Mott検出器の100万倍、Fe-O VLEED検出器の1万倍の効率で可能となった。PEEMの入射部での試料電子引き出し電圧は10-20 kVであるので10 eV以下のhνから数 keV域のhνまでの測定も可能となる。PEEMで実空間image測定した後、容易に特定のミクロ・ナノ領域を選択したSP-2D-ARPES測定が可能なため、この手法は今後スピントロニクスへの応用だけでなくスピン偏極光電子ホログラフィーなどの主流となると思われる。

現状の装置の説明から実際の複数の測定例までを紹介し、さらに将来展望を述べたい。

謝辞 MPI-Halleで研究を共にしたDr.C.Tusche、Dr.M.EllguthならびにProf.J.Kirschnerに感謝する。

  • ナノサイエンス・量子物理学国際研究センター 主催
  • 東京工業大学理学院・物理学系、「ナノサイエンスを拓く量子物理学拠点」共催

更新日:2016.10.21

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