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銅酸化物高温超伝導体を模した2次元斥力ハバード模型を用いて、高温超伝導状態における自己エネルギーの周波数依存構造を調べた。先行研究[1]によって、異常自己エネルギーの虚部に鋭いピークが存在し、それが超伝導を"高温"にしている原因であることが知られていたが、このピークの起源は未解明であった。我々は、クラスター動的平均場理論の解法として有限温度厳密対角化法を用いることで、詳細な実周波数構造を得た。その結果、異常自己エネルギーのピークと同じ周波数に正常自己エネルギーもピークをもつこと、そして、その2つのピークの寄与が一粒子グリーン関数の中で打ち消し合うこと、を見出した。我々は、この後者の性質が、電子相関によって生じるフェルミオン的低エネルギー励起の存在を示すことを明らかにした。電子とこのフェルミオン的励起との混成が自己エネルギーに極を生み、超伝導を高温にする。これは、ボソン的励起だけを考える従来の理論とは本質的に異なる高温超伝導機構である。[2]
類似のフェルミオン的励起は、引力ハバード模型の強結合領域にも見出され[3]、その比較についても議論する。
更新日:2016.07.04