土木・環境工学系 News
東京工業大学 環境・社会理工学院 土木・環境工学系の友部遼助教(都市・環境学コース 主担当)が公益社団法人地盤工学会の2020年度地盤工学会賞(研究・論文賞部門、研究奨励賞)を受賞しました。受賞テーマは「Experiments and FE-analysis of 2-D root-soil contact problems based on node-to-segment approach」(日本語訳:NTS法に基づく2次元根-土接触問題の有限要素法解析と材料試験法の提案)です。授与式は6月4日にオンラインで行われました。
地盤工学会によると、同学会賞の研究奨励賞は「地盤工学に関する注目に値する研究を行い、将来学術の進展に貢献が期待できる業績」に与えられます。36歳未満の個人が対象です。
地盤工学会が発表した授賞理由は次の通りです。
本論文は、風水害に伴う地盤災害に対する効果的な地盤減災手法のひとつとして、土構造物に侵入する植生に着目し、植生と土の力学的相互作用を定量的に評価する材料試験法と、その数値解析手法について論じたものである。植物根と土の力学的相互作用を植生の地盤保護効果を活用し、かつ植生による地盤機能の低下を抑制するためには、植生と土の力学的相互作用を評価し予測することが必要であり、本論文は植生等を利用した少コストな地盤減災方法、堅牢かつ少コストな地盤構造物の設計方法、および土質力学と生体力学の接続といった社会的ニーズに先進的に対応しているものとして高く評価できる。以上により、研究奨励賞としてふさわしいと認められた。
この度は、栄誉ある地盤工学会賞(研究奨励賞)を賜り、大変光栄に存じます。
植生の地盤補強効果を理解・予測することは、低コストかつ効果的な地盤減災手法を開発する上で重要です。植生の地盤補強効果を精度良く見積もるためには、植物根-地盤境界について、力学モデル、材料試験法、および数値解析手法の3点が必要となりますが、そのためには地盤工学や数値解析の知見と、生体力学の知見を組み合わせた新たな手法が必要でした。
本研究では、植物根-地盤境界の構成方程式、材料パラメータを得るための試験法、および有限要素法による数値解析手法を併せて提案しました。これにより、植物根の混入した地盤の変形を精度良く見積もることが可能になりました。現在は、開発した一連の手法に基づき、植生を用いた地盤減災手法の開発を目指しています。
また、我が国では地震や風水害を都市や農村を度々襲い、多くの人命や財産が危機にさらされてきました。そうした中、よりレジリエントな社会基盤の構築とその維持は、待ったなしの課題となっています。そうした社会課題へ向けた新たな研究として、植物が数億年もの年月をかけて最適化してきた根の形態のひみつを本数値解析を通じてか明らかにし、より低コストかつレジリエントな地盤基礎構造物のデザインを提案することを目指しています。
引き続き、植物と地盤、シミュレーションと現場を繋ぐべく研究を加速させてまいりたいと思いますので、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。