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笹本智弘准教授が日本数学会の解析学賞を受賞

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2016.09.20

笹本智弘准教授が日本数学会の解析学賞を受賞しました。

解析学賞は解析学および解析学に関連する分野において著しい業績をあげた人に与えられる賞です。笹本准教授の業績は、2014年のフィールズ賞を受賞したハイラー氏にも刺激を与えたことで知られています。

笹本智弘 理学院 准教授

業績題目:非平衡確率力学系の厳密解による研究

笹本智弘准教授

笹本智弘准教授

笹本智弘氏の研究は、数理物理学、確率論、可積分系など広範囲な分野にわたるもので、近年は相互作用粒子系や界面成長模型等の確率モデルにおける揺らぎの解析を、厳密解を求めることにより行っている。中心極限定理が揺らぎを記述し、その普遍的な極限分布としてガウス分布が現れることはよく知られている。笹本氏の研究は、KPZスケール則、KPZ普遍性とよばれる中心極限定理とはまったく異なる極限定理について探るものである。

笹本氏は、Spohn氏と共同で、KPZ(Kardar-Parisi-Zhang)方程式とよばれる一種の確率偏微分方程式について特殊な初期条件の下で厳密解を求めることにより、揺らぎが時間の1/3乗のオーダーであり、ランダム行列理論で知られていたTracy-Widom分布が極限分布として現れることを示した。この研究が契機となってKPZ方程式の研究は新たな段階に入り、Hairer氏のフィールズ賞受賞を生むきっかけともなった。この方程式は、非線形項と時空ホワイトノイズとよばれる確率項の非協調性により、数学的に意味のある解を持たず、非線形項からの発散の除去、いわゆる繰り込みの操作が不可欠になる。

また、今村氏とともにKPZ方程式の定常状態における界面の高さ分布の厳密解を求めた。さらに、O'Connell-Yorモデルとよばれる有限温度ポリマー模型において行列式構造を見出した。Borodin氏、Corwin氏らとは、q-ボゾン粒子系、q-Hahn粒子系の生成作用素とその固有関数を調べ、Plancherel型の定理を示すことにより、双対性を用いてq-TASEPとよばれる一般化排他過程について、それらの分布を特徴付けるモーメント公式を得た。Spohn氏とは、非対称な反射型相互作用を持つブラウン運動粒子系の研究を行い、双対性を用いることにより、カレントの母関数がフレドホルム行列式の形に書けることを見出した。Giardina氏、Redig氏らとは、量子群に関連する代数的構造を用いることにより、自己双対性を持つ非対称相互作用粒子系の構成を行っている。

以上のように、笹本智弘氏の研究は多岐にわたり独創性は際立っている。国際的な評価も極めて高い。その優れた業績は日本数学会解析学賞に誠に相応しいものである。

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