物理学系 News&Information
理学院では、教員のレベルアップに積極的に取り組んでいます。その取り組みの一環として、優れた教育活動や研究業績を上げた若手教員を表彰する「若手教員教育賞」と「若手研究奨励賞」を設けています。
このたび、物理学系を担当する以下の教員2名がそれぞれの賞を受賞しました。
物理学科2年生科目「物理実験学」では、実際の物理実験より前に、実験技術の体系を座学で解説します。データの統計的扱い、放射線検出器の基礎、電子回路による信号処理などを学習します。いずれも学生が自分自身でデータを収集し、解析をしてみないと実感が湧かないテーマです。
そこで私は乱数を用いたシミュレ-タを作成し、現象(統計、放射線、電子回路)の擬似データを用いて、講義の場でリアルタイムにデータを蓄積し分布が形成される様子を見てもらえるようにし、学生達にとって実験室でオシロスコープやテスタを用いて調査するような内容を、講義室で擬似的に体験することに成功しました。
興味をかきたてると同時に講義の理解を促す効果もアンケートの回答から確認できています。
この科目に限らず他の物理学専門科目でも有効であることが予想されるため、今後も同様の可能性を追求していこうと考えています。
磁性とは電子のスピンが秩序をもってそろった状態のことであり、超伝導体中ではアップスピンとダウンスピンの電子がクーパー対を形成しています。一見するとこれらの秩序は単に競合するだけだと思われますが、近年の強磁性体/超伝導体接合の実験的発展もあり、磁性と超伝導の単なる競合ではない非自明な現象が発見されてきました。例えば、強磁性体/超伝導体接合において、強磁性体中に奇周波数(周波数あるいは時間について奇関数の)トリプレット超伝導が誘起されることが発見され、近年注目を集めています。
私はこの奇周波数トリプレット超伝導の示す物性について明らかにしてきました。特に、従来の超伝導は状態密度にギャップを持ち、磁場を排除する(マイスナー効果)性質を示しますが、この奇周波数トリプレット超伝導は状態密度にゼロエネルギーピークを持ち、磁場を排除しない性質を持つことを明らかにしました。またこれらの予言は最近ケンブリッジ大学のグループによって実験的にも確認され超伝導研究の分野に強いインパクトを与えました。