- 日程
- 2025年10月29日(水)
- 時間
- 15:25-
- 場所
- 大岡山キャンパス
南5号館1階 103B 物理学系輪講室
- 講師
- 楠瀬 博明 教授(明治大学 理工学部)
- お問い合わせ先
- 連絡教員:物理学系 佐藤 琢哉(内線2716)
量子物理学・ナノサイエンス第424回セミナー
概要
カイラリティは自然界に普遍的に存在する性質で、鏡映対称性および空間反転対称性がすべて破れている系の二値的な状態を指す[1]。この二値性に基づく交差相関現象が近年注目を集めている。これらの現象を根本的から理解するためには、「カイラリティ」を量子力学的枠組みの中で明確に識別し、定量化する必要がある。
その目的に対し、我々は結晶中の電子自由度とそれらの相互結合を記述する対称性適合基底の理論的枠組みを開発しており[2,3]、カイラリティの定量的な指標を提案している[4,5]。本講演では、第一原理計算に基づいてTeおよびSeを解析した結果を議論する。p軌道間のスピン非依存な実数非対角ホッピング(電気トロイダル四極子に対応)が、らせん構造を安定化させる主要秩序変数であることを示す。カイラル物質の議論において、スピン角運動量よりも軌道角運動量が重要であることを強調したい。
- [1] See for example, E. Bousquet, et al., J. Phys.: Condens. Matter 37, 163004 (2025).
- [2] S. Hayami and H. Kusunose, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 072001 (2024).
- [3] H. Kusunose, J. Kishine, H.M. Yamamoto, Appl. Phys. Lett. 124, 260501 (2024).
- [4] A. Inda, et al., J. Chem. Phys. 160, 184117 (2024).
- [5] R. Oiwa and H. Kusunose, Phys. Rev. Research 7, 033250 (2025).
- ※「物理学特別講義(発展)第八」を履修する学生は本セミナーも聴講すること。
- 東京科学大学理学院・物理学系 ナノサイエンスを拓く量子物理学拠点 共催