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量子幾何は物質中の電子波動関数が持つ歪み構造を特徴づける概念であり、波数空間内では「ベリー曲率」「量子計量」といったテンソル量により特徴づけられる。量子幾何構造は様々な物理現象に内因性の寄与をもたらすことから近年研究が進展しており、ベリー曲率由来の異常ホール効果や異常ネルンスト効果等はその代表例である。特に2つのバンドが波数空間内の点で交差するワイル点においては、量子幾何は特異点構造を持つため、量子幾何由来の内因性効果も顕著に現れることが期待される。
本講演では、ワイル点構造を持つ磁性体における量子幾何由来の物理現象について、基礎理論と実験による検証を併せて紹介する。一つ目の例として、非一様磁気構造に働く電流誘起スピントルクの過程における、ベリー曲率由来の内因性効果「トポロジカル・ホール・トルク」の理論について解説する[1]。この効果をワイル強磁性体SrRuO3において検証した実験についても紹介する[2]。もう一つの例として、量子計量構造に由来した非線形(2次)異常ホール効果について紹介し、その効果をカイラル反強磁性体Mn3Snの積層構造における輸送測定により実証した研究成果について詳しく述べる[3]。
更新日:2025.04.08