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非線形力学系を次元削減して簡潔な運動方程式によって記述する動的縮約法は古くから発展してきている。自律リズム現象の数理モデルであるリミットサイクル振動子に対する位相縮約法はその典型であり、相互作用する振動子ネットワークの同期現象の解析に重要な役割を果たしてきた。近年、Koopman作用素論に基づく観点から、力学系の動的縮約法に対する新たな発展があった。本セミナーでは、非線形リズム現象に対する従来の縮約理論とKoopman固有関数による力学系の大域線形化と次元削減について概説した後、以下の話題に触れたい。(i)リミットサイクル振動子の位相振幅縮約。近年、非線形振動子の漸近位相や振幅とKoopman固有関数の関係が明らかにされ、従来の位相縮約法がリミットサイクルからの逸脱も捉えられる位相振幅縮約法に一般化された。その導出と応用の概略を述べ、観測時系列からの漸近位相と振幅を推測するデータ駆動的手法を述べる。(ii) 他の力学系への展開。同様のKoopman作用素に基づく動的縮約法の一般論は、形式的には様々な力学系に展開できる。その簡単な例として、解析的に解ける偏微分方程式であるBurgers方程式と、シンプルな有限状態系である基本セルオートマトンに対するKoopman作用素論の定式化について触れたい。
更新日:2025.02.21