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超短パルス光を強磁性金属に照射すると、1ピコ秒以内に急激な磁化の減少が起こる。この「超高速減磁」と呼ばれる現象は、1996年にBeaurepaireらによりはじめて報告された[1]。超高速減磁に伴うスピン角運動量の散逸過程では超拡散スピン流が生じる[2]。この超高速なスピン流は、重金属の逆スピンホール効果で電流へと変換すれば、テラヘルツ波発生にも利用可能である[3]。一般的にスピン流-電流変換層にはPtやWなどの非磁性重金属が用いられるが、磁性金属合金の変換層として資質は十分に検討されてこなかった。本講演前半では、磁性金属における超高速減磁と関連現象について紹介した後、規則型反強磁性合金Mn3Irのスピン変換現象に起因するテラヘルツ波発生を調べた研究成果[4]を紹介する。また、我々は、X線自由電子レーザーを用いて、磁性体の内核-外殻光学遷移に起因する超高速現象の観測にも挑戦している。講演後半では、Pt/Co/Pt強磁性多層膜を用いて、内核-外殻光学遷移に起因する磁化反転や超高速減磁の観測に成功したことを紹介する。
更新日:2024.04.25