イベント・セミナー・講演会
キラリティーを有する磁気渦-スキルミオンは、「巻き付き数」と呼ばれる「トポロジカル不変量」を持つ[1]。そのトポロジーの特徴によって、極めて低い電流密度(磁壁に比べて5桁低い)で駆動可能[2]など、次世代省エネルギーデバイス、大容量情報記憶媒体、およびリザバーコンピューティング素子などへの応用が強く期待されている。
スキルミオンは、1960年代に原子核物理学において核子の粒子性を担保するモデルとして提唱され[3]、その後、物性理論学において磁性体中の電子スピン配列が織りなす空間構造(テクスチャ)としてその存在が予言された[4]。我々は可変磁場下のローレンツ電子顕微鏡法を用いた実空間観察で、正確に定義されたスキルミオンのキラリティーとトポロジーが実証された。また、スキルミオンの周期構造に加えて、単独のスキルミオンの粒子状態の存在が明らかにされた[5]。スキルミオンはある厚みの試料において、試料の厚さ方向に伸び、3次元的なスキルミオン紐が形成される[6]。この三次元トポロジカルスピテクスチャーを可視化するために、3次元磁気構造の顕微技法を開発し、スピン(反)ヘッジホッグを携帯するスキルミオン紐のベクトル場の分布を明らかにした[7]。
本講演では、数々の磁性体中に励起された、種々のトポロジカルスピンテクスチャー、(反)スキルミオン、(反)メロン、ホプフィオンとその電流/熱流駆動ダイナミクス、また、外部磁場や温度によりその相互転換をその場観察の結果を紹介する予定である。
本講演に取り入れた成果の一部は、日本学術振興会(JSPS)からの科学研究(A)助成金(Grant No. 19H00660, 23H05431)および日本科学技術振興機構(JST)CRESTプログラム(Grant No. JPMJCR1874, JPMJCR20T1)のサポートを受けています。
更新日:2024.01.09