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超伝導量子回路を用いた量子情報処理技術

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日程
2023年11月20日(月)
時間
15:25-
場所
大岡山キャンパス別窓 本館1階 M-123 講義室(H111)
講師
齊藤 志郎  氏 (NTT物性科学基礎研究所)
お問い合わせ先
連絡教員:物理学系 納富 雅也(内線3831)

量子物理学・ナノサイエンス第374回セミナー

概要

量子力学の世界では、重ね合わせ状態、もつれ状態といった古典力学では現れない不思議な状態が存在する。この量子性を積極的に活用した量子情報処理技術が注目を集めている。特に、超伝導回路から構成される超伝導量子ビットは、その操作性・拡張性への期待から飛躍的に発展してきた。近年、量子状態制御技術が向上し、量子計算機のみならず、量子シミュレーション、量子センシングといった新しい応用先に向けた研究も進んでいる。

本講演では、超伝導量子回路を用いた量子情報処理技術の現状を概観したのち、超伝導量子ビットの例として、磁束量子ビットを詳しく紹介する。磁束量子ビットは、量子計算の基本素子としてだけではなく、巨視的量子性を実証するための素子としても注目を集めている。まずは、磁束量子ビットを用いて巨視的実在性の破れを検証した実験結果を紹介する[1]。続いて、電子スピン集団を超伝導量子ビット用の量子メモリとして利用するハイブリッド技術[2]と、逆に超伝導量子回路を用いて電子スピンを検出する量子センシングに関する研究[3]を紹介する。さらに、センシングの感度向上を目指して設計した長寿命磁束量子ビットにおいて、量子ビットのデコヒーレンスの主要因である2準位欠陥を識別する手法を見出した[4]。この結果をチップ作製にフィードバックすることにより、量子計算機の特性改善に貢献し得る成果である。最後に、磁束量子ビットと電子スピン集団とのハイブリッド素子を用いた高感度温度計に関する実験を紹介する[5]。

            
  • [1] G. C. Knee, et al., Nature Commun. 7, 13253 (2016).
  • [2] X. Zhu, et al., Nature 478, 221 (2011), S. Saito, et al., Phys. Rev. Lett. 111, 107008 (2013).
  • [3] H. Toida, et al., Appl. Phy. Lett. 108, 052601 (2016), R. Budoyo, et al., Phys. Rev. Mater. 2, 011403(R) (2018), H. Toida, et al., Commun. Phys. 2, 33 (2019), R. Budoyo, et al., Appl. Phys. Lett. 116, 194001 (2020). H. Toida, et al., Commun. Phys. 6, 19 (2023).
  • [4] L. V. Abdurakhimov, et al., APL 115, 262601 (2019). L. V. Abdurakhimov et al., Phys. Rev. B 102, 100502(R) (2020). L. V. Abdurakhimov et al., PRX Quant. 3, 040332 (2022).
  • [5] K. Kakuyanagi, et al., New J. Phys. 25 013036 (2023).
  • 東京工業大学理学院・物理学系 ナノサイエンスを拓く量子物理学拠点 共催

更新日:2023.10.18

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