- 日程
- 2023年8月18日(金)
- 時間
- 16:00-
- 場所
- 大岡山キャンパス 南5号館5階 503CD 大会議室
- 講師
- 宮本 克彦 准教授(千葉大学 大学院工学研究科)
- お問い合わせ先
- 連絡教員:物理学系 佐藤 琢哉(内線2716)
量子物理学・ナノサイエンス第370回セミナー
概要
トポロジカルな波面構造を有する光波の代表として,連続的な螺旋波面を有する光渦が挙げられる。1992年Allen[1]らは,光渦が螺旋波面に由来する軌道角運動量を有することを理論的に報告した。これまでに,円筒座標系の近軸固有解であるラゲール・ガウスビームをはじめ,高次ベッセルビームなど,多くの光渦が報告され,超解像顕微鏡,光マニピュレーション,量子光学などへの応用が提案されている。われわれは,金属・半導体を対象に,光渦照射によるキラルな質量移動の誘導に成功してきた[2-4]。近年では,光渦によるレーザー誘起前方転写[5],結晶構造のキラリティー制御[6]についても実現してきた。このほか光渦の軌道角運動量は,多重極プラズモンや磁気スキルミオンなどの準粒子を物質中に誘起することが知られており,円偏光ガウスビームではこれらの現象を誘導することは決してできない。
テラヘルツ領域は,分子や分子群の大振幅振動をはじめとした様々な物理現象の舞台である。テラヘルツ領域におけるトポロジカル光波は物性研究において,可視域と同様,あるいは,それ以上に重要な役割を担う可能性があると,われわれは考えている。
本講演では,開発したツルピカ-SPP[7],高次ベッセルビームを発生させるツルピカ・アキシコンレンズ[8],テラヘルツ光渦を用いた超解像イメージング[9]の原理実証に加え,周波数可変テラヘルツ・トポロジカル光源[10]についても紹介する予定である。
- [1] L. Allen et al., Phys Rev A,45 8185 (1992).
- [2] K. Toyoda et al., Nano Lett 12 3645 (2012).
- [3] K. Toyoda et al., Phys Rev Lett 110 143603 (2013).
- [4] F. Takahashi et al., Sci Rep 6 21738 (2016).
- [5] H. Kawaguchi et al., Nanophotonics 11 855 (2021).
- [6] K. Toyoda et al., Optica 10 332 (2023).
- [7] K. Miyamoto et al., Appl Phys Lett 104 261104 (2014).
- [8] K. Miyamoto et al., Optics Continuum 1 633 (2022).
- [9] K. Miyamoto et al., Sci Rep 6 38880 (2016).
- [10] K. Miyamoto et al., Opt Express27 31840 (2019).
- 東京工業大学理学院・物理学系 ナノサイエンスを拓く量子物理学拠点 共催