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ガンマ線バーストは相対論的ジェットを放つ、宇宙最大の爆発現象である。即時放射と呼ばれる数秒から数十秒のガンマ線放射に続き、残光と呼ばれる、主にX線や可視光で徐々に減衰する放射が見られる。これは相対論的ジェットが星周物質に衝撃波を形成し、そこで加速された電子からのシンクロトロン放射だと考えられている。相対論的衝撃波における粒子加速は、数値シミュレーションによる進展にも関わらず、その理解は進んでいない。また、Swift衛星の打上げによって、ガンマ線バーストの初期残光にはShallow Decay Phaseと呼ばれる、緩やかな放射の減衰が見られる時期があることが判明し、この振舞いの理由は現在に至るまで理解されていない。Fermi衛星の打上げ以来、GeVガンマ線による初期残光も確認されてきたが、シンクロトロン放射という描像を覆すものではなかった。しかし近年になって、MAGICやHESS、LHAASOなどによって、TeV残光が確認され、逆コンプトン放射による成分が確認された。これにより、従来よりさらに確からしく磁場などのパラメータが決まってきた。
本講演ではこうした最近のGRB残光の観測のレビューと、そこでの粒子加速の物理について解説する。CTAなどのガンマ線将来観測では、Shallow Decayの謎のヒントが得られるであろう。さらに、ジェット放出物中を走る逆行衝撃波起源の放射の検出も期待され、そこからジェットの磁化率などの物理に迫ることが可能になってくる。こうした将来観測への期待についても、残光の放射モデルと共に議論する。
更新日:2023.06.19