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空間反転対称性の破れた系に光を照射すると、バイアス印加無し(ゼロバイアス)で直流電流が発生する。そのようなゼロバイアス光電流が観測される代表例が、半導体p-n接合界面を利用した太陽電池や光検出器である。他方、物質の結晶構造の空間反転対称性の破れに由来するゼロバイアス光起電力(光電流)発生はバルク光起電力効果と呼ばれ、これまで強誘電体・圧電物質・半導体などにおいて報告されており、近年ではトポロジカル物質の物性研究の新たなツールとしても関心を向けられている。さらに、光の偏光の自由度と組み合わせ、電荷の流れ(電流)のみならずスピンの流れ(スピン流)をも生成・制御する新しいスピントロニクス機能として注目されている [1]。
本セミナーでは、最近我々が行っている、対称性を制御した人工物質(メタマテリアル)を用いた光-電流-スピン流制御の研究について紹介する [2]。具体的には、3回回転対称性、極性、キラリティを人工的に導入した磁性体/非磁性体から成るメタマテリアルにおいて、「空間反転対称性の破れ」や「時間反転対称性の破れ」に起因する様々な光-電流-スピン流応答が生じることを示し、ナノ空間の対称性を人工操作した新規スピントロニクス「メタ光スピントロニクス」について議論したい。
更新日:2023.04.20