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多体系の長波長・長周期の時空発展は流体力学という単純かつ普遍的な低エネルギー有効理論で記述される.そのような階層を記述する方程式の1つがナビエ・ストークス方程式だが,通常これは平均値としての運動を記述する決定論的な非線形偏微分方程式として扱われる.しかし,熱平衡系で観測されるゆらぎのふるまいを再現するためには,揺動散逸定理を満たすように拡張された「確率論的なナビエ・ストークス方程式」を考える必要がある.本講演では,このような熱ゆらぎの寄与まで考慮した「ゆらぐ流体力学」に関して,経路積分を用いた定式化と解析方法について基礎から解説する.とくに,通常の流体力学に現れる輸送係数などのパラメータが,流体ゆらぎの寄与を考慮した結果「くりこまれた輸送係数」と理解されるべきこと,ならびに輸送係数の定義が空間次元によっては問題を持ちうることなどについて説明する.
更新日:2023.02.02