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Event Horizon Telescope (EHT)によるブラックホールシャドーの初観測により、活動銀河中心核研究が転機を迎えている。今回観測結果が発表された電波銀河M87ではブラックホールに落下するガスが少ないため落下流の密度が低くて冷えにくく、高温のRIAF (Radiatively Inefficient Accretion Flow)が形成される。このようなブラックホール降着流の大局的な3次元磁気流体シミュレーション結果を観測と比較することにより、ブラックホール降着流の物理状態を明らかにしたり、ブラックホールのスピンを決定したりできると期待している。理論的には、降着流の密度が上限値を超えると輻射冷却が卓越して降着流が冷え、RIAFが存在できなくなる。最近、活動銀河中心核の光度・輻射スペクトルが短時間で変化するChanging Look AGNが注目されており、低光度のセイファート銀河の増光に伴って軟X線超過領域が出現することが報告されている(Noda et al. 2014)。我々は新たに作成した3次元輻射磁気流体コードを用いて降着率がRIAFの上限以上になった場合のブラックホール降着流のシミュレーションを実施し、ブラックホール近傍の109K以上の高温領域(RIAF)の外に107K程度に冷えた高光度領域が形成されること、この領域で回転周期程度の激しい光度変動が生じることを見出した。この領域から放射されたX線が遠方の105K程度の低温円盤を照射することにより、可視光変動も説明できる。これらの進展により、活動銀河中心核の統一的理解が進んでいることを報告する。
町田真美らによる降着流の3次元磁気流体シミュレーション結果に基づいてM.Bursaが作成したブラックホールシャドーの画像。数字は視線方向と回転軸がなす角度。
更新日:2019.06.24