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磁石や強誘電体などでは磁化や電気分極が自発的に生じ,それらに誘起される形で周辺に静電磁場が生じる.一方,物質との相互作用によって電磁場自体が(秩序変数として)自発的に現れる超放射相転移(super-radiant phase transition)と呼ばれる現象が,量子光学の分野で探究されている.電磁波と物質のコヒーレントなダイナミクスが追究されてきた光科学技術に,熱や相転移の概念を明確に導入できることが1つの動機である.ただし,超放射相転移は1973年に理論的に提唱された後,非平衡下では2010年に冷却原子系で観測されたものの[1],熱平衡下における本来の意味での超放射相転移は未だ実現されていない.研究の初期から,物質中の電荷と電磁場との相互作用では,超放射相転移はまず起こらないと理解されてきた.一方,我々は2016年に,超伝導回路からなる人工原子系ならば超放射相転移に類似の相転移を熱平衡下で起こせることを理論的に示した[2].また,2018年には,ErFeO3という磁性体が示す磁気相転移と超放射相転移との類似性の傍証を実験的に見出した[3].本セミナーでは,超放射相転移の研究背景とともに,その実現を目指した,これら最新の研究成果を紹介する.より詳細な解説については[4]を参照のこと.
更新日:2018.12.07