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静的近似を用いない量子系の平均場模型の分配関数の厳密な解法

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日程
2018年7月20日(金)
時間
14:00-15:00
場所
大岡山キャンパス別窓 本館2階 H284B 物理学系輪講室
講師
奥山 真佳 氏(東京工業大学 理学院 物理学系)
お問い合わせ先
連絡教員:物理学系 古賀 昌久(内線2727)

量子物理学・ナノサイエンス第237回セミナー

概要

分配関数を厳密に求めるのは一般に非常に難しく、厳密解が得られる模型は限られている。古典スピン系の平均場模型では、鞍点法を用いることにより、熱力学極限での自由エネルギーを厳密に求めることが可能である。量子スピン系の平均場模型でも鈴木・トロッター変換によって分配関数を古典系の分配関数にマッピングすることにより、同様の解析を実行することが可能である。しかし、このとき分配関数には虚時間方向の依存性が生じるため厳密な解析は困難であり、通常は虚時間方向の依存性を無視する静的近似が用いられてきた。

静的近似は必ずしも良い近似解を与えるわけではなく、ランダムな相互作用を持つ横磁場SK模型では静的近似が破綻することが知られている[1]。一方で、相互作用が一様な平均場模型では、数値計算の結果などから静的近似が厳密であると信じられている[2]が、その証明は非常に特殊な場合に限られている。

我々は全結合型の相互作用によって記述される任意の平均場模型に対して、分配関数の虚時間方向の寄与を評価する問題を虚時間シュレディンガー方程式における最適制御問題と見なすことにより、静的近似を用いずに分配関数を厳密に求めた[3]。結果として、全結合型の相互作用によって記述される平均場模型では、相互作用や横磁場などがランダム性を含んでいても、静的近似が一般に厳密であることが明らかになった。

さらに、我々の結果は非一様横磁場を用いた量子アニーリングによる計算時間の指数加速が報告された先行研究[4]を含んでおり、先行研究の解析が平衡統計力学の範囲では厳密であることを意味する。

  • [1] T. Obuchi, H. Nishimori, and D. Sherrington, J. Phys. Soc. Jpn. 76, 054002 (2007).
  • [2] T. Jorg, F. Krzakala, J. Kurchan, A. C. Maggs, and J. Pujos, Europhys. Lett. 89, 40004 (2010).
  • [3] M. Okuyama and M. Ohzeki, in preparation.
  • [4] Y. Susa, Y. Yamashiro, M. Yamamoto, and H. Nishimori, J. Phys. Soc. Jpn. 87, 023002 (2018).
  • 量子物理学・ナノサイエンス先端研究センター 主催
  • 東京工業大学理学院・物理学系、「ナノサイエンスを拓く量子物理学拠点」共催

更新日:2018.07.18

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