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アンドレーエフ束縛状態はペアポテンシャルがフェルミ面上で符号変化する異方的超伝導体においては、零エネルギー状態を含む表面アンドレーエフ束縛状態(SABS)として表面(界面)に存在することが知られている。我々は異方的超伝導体の代表例であるd波超伝導が実現する銅酸化物超伝導体において、零エネルギーアンドレーエフ束縛状態(ZESABS)が、トンネル効果の零電圧コンダクタンスピークとして現れることを明らかにし超伝導のトンネル分光の発展に貢献した[1]。また銅酸化物超伝導体のジョセフソン接合においてジョセフソン電流に新奇な温度依存性が存在することを明らかにした[2]。
その後ZESABSの起源の数理構造の解析を行った。ZESABSは、ハミルトニアンと反可換な演算子Γの固有関数となりその固有値は ±1となる。固有値が1の個数をn+ 、-1の個数をn- としたときに バルクの系に対して定義される巻きつき数wとの間にw = ± ( n+ - n- ) という指数定理が成り立つことが明らかになった[3]。
異方的超伝導体と拡散伝導領域の金属(DN)を接合した系の研究が15年ほど前に行われた。d波超伝導体のZESABSはDNに浸入しないのに対して、p波超伝導体のZESABSはDNに浸入しうることを我々は明らかにした[4]。最近この性質が、指数定理を用いることで説明できることが明らかになった[5]。
他方SABSはバルクには存在しない特別なクーパー対奇周波数クーパー対とみなすこともでき、ZESABSが存在する時には必ず奇周波数クーパー対が存在することが明らかになっている[6]。講演では、トポロジーと対称性の観点からどのようにアンドレーエフ束縛状態の理解が深化されてきたのかその経緯を御紹介したい。
References
更新日:2018.06.22