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Fe3O4は古くから磁性体として知られているが、ハーフメタリシティやVerwey転移と呼ばれる120 Kでの構造変化を伴う金属-絶縁体転移などで現在でも注目を集めている。Fe3O4 は逆スピネル型構造をとり、Feは酸素が四面体的に配位したFe(A)サイトと八面体的に配位したFe(B)サイトの2種類のサイトを占有している。Verwey転移のメカニズムは完全には解明されていないが、Fe(B)サイトの電荷秩序と軌道秩序の形成によるものと考えられている。これまで我々は低速電子線回折(LEED)を用いて表面構造を観察し、バルクで見られるVerwey転移点での不連続な構造相転移が表面では見られないことを発見した。したがって、表面ではVerwey転移のふるまいがバルクと異なると考えられる。その原因として、電荷秩序を担うFe(B)の価数がバルクと異なる可能性が考えられる。本研究では、紫外光電子分光法と第一原理計算を用いて、Fe3O4(111)表面電子状態の解明と制御を目指した。
また、Fe3O4の表面は特有の磁性を持つことが知られ、ナノ粒子の研究で表面の磁化方向がバルクと異なることが分かっている。しかし、ナノ粒子ではサイズ効果と表面の効果が混在し区別できない上、ストイキオメトリックな試料を得ることが難しい。そこで、本研究では単結晶Fe3O4(111)表面の磁性を、内部転換電子メスバウアー分光法(CEMS)と核共鳴散乱法(NRS)を用いて観察し、表面にバルクとは異なるノンコリニアな磁気構造が存在することを明らかにした。
更新日:2018.04.11