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Weyl強磁性体における異常熱Hall効果

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日程
2017年10月10日(火)
時間
14:00 - 15:30
場所
大岡山キャンパス別窓 本館2階 H284B 物理学系輪講室
講師
下出敦夫氏(理化学研究所)
お問い合わせ先
連絡教員:物理学系 西田祐介(内線3614)

量子物理学・ナノサイエンス第198回セミナー

概要

温度勾配と垂直に熱流が流れる現象を熱Hall効果と呼ぶ。近年では、強磁性金属において異常Hall効果に対する非弾性散乱の効果を明らかにしたほか[1]、強磁性絶縁体やフラストレート磁性体においてスピン励起のHall効果を観測するために用いられた[2]。

一方で理論的には、熱Hall伝導度を計算することは難しく、不純物も相互作用もない系を除いて微視的な議論がなされてこなかった。Luttingerの重力ポテンシャルを導入し[3]、Kubo公式だけでなく熱磁化と呼ばれる補正項を計算しなければならない[4]。不純物も相互作用もない系ではBerry曲率を用いた簡潔な公式が知られており[5]、不純物がある場合にも一般化されたWiedemann-Franzの法則が成り立つことが知られているが[4]、実験の進展を考えると、相互作用を取り入れられる摂動論を確立することが望ましい。

本講演では、最初に時間並進対称性をゲージ化することで、エネルギー流と相互作用する重力ゲージ場と場の強さである重力電磁場を導入する[6]。磁場を用いて軌道磁化が定義されるように、重力磁場を用いて熱磁化を定義することができる。次にKeldysh Green関数の勾配展開に重力ゲージ場を取り入れ、熱伝導度や熱磁化を一般的に計算する手法を提案する[6]。最後に異常熱Hall効果を示すWeyl強磁性体にこの手法を適用し、非磁性不純物がある場合に熱Hall伝導度を含む輸送係数を計算する[7]。

  • [1] Y. Onose et al., Phys. Rev. Lett. 100, 016601 (2008).
  • [2] Y. Onose et al., Science 329, 297 (2010); M. Hirschberger et al.,Science 348, 106 (2015); D. Watanabe et al., Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A. 113, 8653 (2016).
  • [3] J. M. Luttinger, Phys. Rev. 135, A1505 (1964).
  • [4] L. SmrČka and P. StŘeda, J. Phys. C 10, 2153 (1977).
  • [5] R. Matsumoto and S. Murakami, Phys. Rev. Lett. 106, 197202 (2011);T. Qin et al., Phys. Rev. Lett. 107, 236601 (2011).
  • [6] A. Shitade, Prog. Theor. Exp. Phys. 2014, 123I01 (2014).
  • [7] A. Shitade, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 054601 (2017).
  • ナノサイエンス・量子物理学国際研究センター 主催
  • 東京工業大学理学院・物理学系、「ナノサイエンスを拓く量子物理学拠点」共催

更新日:2017.09.12

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