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2次元冷却フェルミ原子気体で観測されたBerezinskii-Kosterlitz-Thouless(BKT)転移温度[1]近傍において、常流動相の対形成揺らぎを考慮した強結合理論から物理的特性を議論する。
観測されたBKT転移温度近傍において、熱力学量や光電子分光型スペクトルなどの実験が盛んに行われている[2,3]。特に光電子分光型スペクトルの実験では、BKT転移温度以上で、クーパー対の形成に起因した擬ギャップ現象を示唆するスペクトル構造が観測されている[3]。一方、理論研究においては、超流動秩序パラメータΔの振幅揺らぎは十分抑えられているという仮定のもとに、位相揺らぎのみを考慮した理論でBKT転移が記述されている[4]。しかしながら、擬ギャップ現象を記述する上で、従来のBKT理論[4]では取り入れられていない対形成揺らぎを考慮した強結合理論が必要である。また、クロスオーバー領域において、強結合理論で実験結果[1]が再現されることから[5]、対形成揺らぎがBKT転移温度近傍で重要になると考えられる。しかしながら、幅広い相互作用領域において、対形成揺らぎが顕著になる温度領域は明らかにされていない。
本セミナーでは、強結合理論を用い、2次元冷却フェルミ原子気体における擬ギャップ現象を解析、弱結合から強結合領域にかけて、対形成揺らぎが顕著な温度領域を明らかにする[6]。そして、温度や相互作用強度が変化した時の擬ギャップ構造の振る舞いから、2次元冷却フェルミ原子気体の相図を完成させる。完成させた相図から、2次元冷却フェルミ原子気体の物理的特性を示す。また、従来のBKT理論[4]と1粒子状態密度の比較を行い、対形成揺らぎを考慮する必要がある相互作用領域について示す。さらに、最近の熱力学量を観測した実験[2]との比較も行う。
更新日:2017.09.12