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機械学習やビッグデータというキーワードで象徴されるように、近年、情報科学の発展が目覚ましい。その発展を基礎科学の研究に取り入れるべく様々な試みが行われている。本研究ではスパースモデリングに注目する。スパースモデリングとは機械学習などで必要となる多変数の最適化問題において、重要でないパラメーターを強制的にゼロにすることによって、オーバーフィットを避け、柔軟な予測を可能とする技術である。これは単なる最適化手法ではなく、無数の変数または基底の中から本質的な要素を抽出する理論でもある。この情報理論が量子多体問題の研究において有用となる例を紹介する。
量子モンテカルロ法は量子多体系の数値計算法として非常に有用であるが、強相関系で特に重要となる動的相関関数に関連して、次のような問題がある:
(a)虚時間データから実振動数スペクトルへの解析接続(ノイズあり逆問題)、及び
(b)動的多体相関の計算コストとデータ量の問題。
これらの一見すると関連のなさそうな問題が、一挙に解決できることを示す。(a)の問題にスパースモデリングを適用することで、誤差を含む虚時間データから有意な情報を抜き出し、安定して物理的に妥当なスペクトルが得られる[1]。その過程で得られる基底は、動的多体相関を極めてコンパクトに表現するものであり、それにより(b)の問題も解決される[2]。このことは、裏を返せば、従来の虚時間表現ではほとんど無意味な情報を保有していたということを意味している。
本研究は大関真之氏(東北大情報)、品岡寛氏(埼大理)、吉見一慶氏(東大物性研)との共同研究である。
更新日:2017.04.10