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金属酸化物への電子ドープにより光触媒活性が向上

水素をつくりだす新たな高性能光触媒の開発に向けて

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2018.07.06

太陽光を利用して水から水素を生成する光触媒[用語1]は、 日本人研究者を中心として研究が進められています。これまでの光触媒開発は主にトライアンドエラーによるもので、 高性能光触媒を合理的に設計することが難しく、何を制御すれば高性能化できるのか十分にわかっていませんでした。
九州大学 エネルギー研究教育機構(Q-PIT)の山崎仁丈教授、稲盛フロンティア研究センターの兵頭潤次特任助教、 東京工業大学の前田和彦准教授、熊谷啓特任助教、西岡駿太(大学院生・日本学術振興会特別研究員)、 豊田工業大学の山片啓准教授、Junie Jhon M. Vequizo博士、物質・材料研究機構(NIMS)の木本 浩司博士、山下俊介博士らの 研究グループは、金属酸化物であるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3-δ)に 高濃度の酸素欠陥と電子をドープ[用語2]することで、紫外光照射下における水素生成速度、酸素生成速度が それぞれ40倍、3倍と大幅に向上することを発見しました。また、この理由が、紫外光照射により励起された電子寿命の 延長およびホール流束の増大によることを世界で初めて明らかにしました。
これらは材料科学と触媒化学の学際融合研究による成果であり、この光触媒設計指針に基づいて新規光触媒を開発することで、 今後は太陽光と光触媒を利用した水素生成反応のさらなる高性能化が期待されます。
本研究は、日本学術振興会 科学研究費補助金(JP16H06440, JP16H06441, JP17H05491, JP16H06130, JP15K14220, JP15H02287, JP16H00891)の支援を受けました。

本研究成果は、米国化学会の国際学術誌「ACS Catalysis」のオンライン速報版で日本時間2018年6月19日(火) に掲載されました。確定版は日本時間 2018年7月3日(火)に掲載される予定です。

用語説明

[用語1] 光触媒 : 光を吸収することで、水分解などの酸化還元反応の速度を大幅に促進する物質のこと。

[用語2] ドープ(dope) : 主に半導体において、その特性を制御するため不純物を少量加えること。

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