数理・計算科学系 News

世界初、環境価値取引の信頼性を確保するハイブリッドブロックチェーン技術を開発

市場取引により水素・CO2・合成燃料の価値を可視化し、カーボンニュートラルの実現に貢献

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2026.04.09

ハイブリッドBCを用いた価値取引の全体像 (BC: Blockchain, CN: Carbon Neutral, DAC: Direct Air Capture)。

ハイブリッドBCを用いた価値取引の全体像 (BC: Blockchain, CN: Carbon Neutral, DAC: Direct Air Capture)。

東京科学大学(以下、Science Tokyo)総合研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所小田拓也特任教授(兼務:北九州市立大学)、情報理工学院 数理・計算科学系の田中圭介教授、同学院 情報工学系のデファゴ・クサヴィエ(Defago Xavier)教授、田村康将特定助教(兼務:北海道大学)と三菱電機株式会社(以下、三菱電機)は共同で、環境価値取引の信頼性を確保するハイブリッドブロックチェーン(BC) [用語1] 技術を、世界で初めて [用語2] 開発しました。本技術は、水素、CO2、合成燃料などの変換価値 [用語3] と、その環境価値 [用語4] に関する履歴を正確に記録・管理し、改ざんが極めて困難な形で保存します。これにより、事業者や個人がエネルギーや合成燃料の取引に安心して参加できる仕組みを提供し、カーボンニュートラル社会の実現に貢献します。


温室効果ガスの排出量削減に向けて、企業や自治体は太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入を積極的に進めています。これらの取り組みを通じて得られる環境価値は、温室効果ガス削減目標の達成状況やESG評価などの根拠として活用され、国内では非化石証書市場 [用語5] J-クレジット制度 [用語6] 、海外では I-REC [用語7] などの制度を通じて取引されています。さらに、東京都と日本取引所グループは、2024年度からグリーン水素トライアル取引事業を開始し、市場形式での水素取引を試行しています。しかし、このように制度や市場が拡大する一方で、環境価値の認証や取引管理、運用にはいくつかの課題があります。例えば、再生可能エネルギーは、電気や熱として直接利用されるだけでなく、水素や合成燃料などさまざまな形に変換して利用されるため、環境価値を正しく取引するためには、全ての環境価値の発生源や数量を正確に把握した上で、変換プロセスを透明化する必要があります。しかし、現状では、認証基準や情報管理方法が統一されておらず、記録情報を一元的に管理・流通させるための仕組みが十分に整備されていません。また、証書発行時のタイムラグや手続きの不透明性、グリーンウォッシュなどの問題も存在します。これらの課題を解決し、環境価値取引の信頼性を維持するためには、膨大な量のデータ処理の高速化とトレーサビリティーを確保する仕組みが不可欠です。


今回、暗号・分散システムやエネルギーシステム技術に強みを持つScience Tokyoと、エネルギーマネジメント技術に強みを持つ三菱電機は、「三菱電機エネルギー&カーボンマネジメント協働研究拠点 [用語8] に」おいて、参加者を限定したプライベート型のトレーサビリティー用BCと、多くの参加者が自由に参加できるパブリック型の価値取引用BCを独自開発し、これらを組み合わせることで、環境価値取引における膨大な記録情報の高速処理と履歴追跡という課題を解決し、環境価値の正確な評価と一元的な管理・流通を可能にする新たなハイブリッドBC技術を開発しました。本技術により、再生可能エネルギー由来の電気、熱、水素、CO2、合成燃料などの変換価値とその環境価値を市場取引で可視化するとともに、それらの変換履歴と取引履歴を、改ざんが極めて困難な形で保存します。これにより、事業者や個人がエネルギーや合成燃料の取引に安心して参加できる「分散型価値取引市場 [用語9] 」の構築と各地域社会への提供に貢献し、環境価値を地域内で循環させる地産地消型のカーボンニュートラル社会の実現に寄与します。


用語説明

[用語1] ハイブリッドブロックチェーン(BC):取引記録などの情報を「ブロック」と呼ばれる単位にまとめ、時系列で鎖のように繋げて保存する仕組み

[用語2] 世界で初めて:2026年3月16日現在、三菱電機調べ。環境価値の取引履歴だけでなく計測データを含む全てのデータをBCで管理する技術として

[用語3] 変換価値:再生可能エネルギーや低炭素技術によって、ある形のエネルギーを電力・合成燃料など別の形に変換する際に生じる価値を、発生源や数量とともに記録・証明したもの

[用語4] 環境価値:再生可能エネルギー由来電力や低炭素技術などによって得られる温室効果ガス削減効果や環境負荷低減効果を数値化し証明したもの

[用語5] 非化石証書市場:再生可能エネルギーや原子力など、化石燃料を使用しない電源から発電された電力の「非化石価値」を証書化し、取引する市場。日本卸電力取引所が運営

[用語6] J-クレジット制度:国内の温室効果ガス排出削減量や吸収量をクレジットとして認証し、企業や自治体などが売買できる制度。再生可能エネルギーの導入、省エネ設備の設置、森林管理などによる削減・吸収量などが対象

[用語7] I-REC(International Renewable Energy Certificate):国際的な再生可能エネルギー証書制度。発電事業者が再生可能エネルギー由来電力の環境価値を証書化し、国境を越えて取引できる仕組み

[用語8] 三菱電機エネルギー&カーボンマネジメント協働研究拠点:2023年4月14日広報発表「三菱電機と「三菱電機エネルギー&カーボンマネジメント協働研究拠点」を設置 | 旧・東京工業大学」。三菱電機とScience Tokyoの強みを活かし、電力・熱・化学物質などのエネルギーや物質に関する環境価値取引を含むエネルギー&カーボンマネジメント、カーボンリサイクルなどのグリーントランスフォーメーション関連技術の開発や未来価値洞察・技術トレンド分析による新技術の探索・創出活動に取り組む組織

[用語9] 分散型価値取引市場:環境価値を、地域やコミュニティ単位で安全かつ透明に取引できる市場。BC技術により取引記録や価値の証明を分散管理し、価格は場所・時間・量に応じて決定される


詳しくは、下記 Science Tokyo ニュースをご覧ください。

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