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経営工学系のメンバーに小池真由助教が加わりました

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2023.02.02

小池真由先生が2023年1月に経営工学系に着任されました。エジンバラ大学で社会心理学の博士号を取得したのち広島大学にご勤務なさっていました。新任に際しての抱負などをご紹介します。

小池真由助教

小池真由助教

まずはご専門をお聞かせください。

私の研究は擬人化(人間で無い存在を人間のように見なすこと)と恋愛関係に焦点を当てています。擬人化がどのようにして成り立つのか、特に仮想エージェントに恋愛感情のような強い愛着を形成することや、そのことが人のウェルビーイングを潜在的に改善しうること(例えばその関係を研究することによって新しいテクノロジーをよりよく理解できるようになることなど)に関して、心理学的・認知的なメカニズムを理解することに興味を持っています。
私は日本のサブカルチャーにとても興味を持っています。人間と非人間の恋愛関係を研究するという発想は私の趣味から形成されたといえます。日本はこれまで多くの評価の高いアニメやマンガ、ゲームを産み出してきた、擬人化で世界の最先端の国と言えるでしょう。これらのサブカルチャーは広く人気があり、全世界にファンがいます。中には架空のキャラクターをあたかもリアルな存在であるかのように想像する人もいます。私たちが架空のキャラクターと形成するこのような関係は、私たちの心理的なウェルビーイングを高めるのでは無いかと私は考えました。私は日本で生まれ育った人のひとりとして、私たちと仮想エージェントとの関係が持つポジティブな側面に興味があると同時に、私たちがどのようにしたらそのような仮想エージェントと”本物の”関係を築き維持することができるのか、にとても興味があります。このような知見は学術的な意味があるだけでなく、技術を開発する人にとってもより良いシステムを作るための手助けになると考えています。ユーザー、開発者、そして学術研究者の橋渡しをするのが私の役割だと考えています。

先生の研究分野で今先生が最も重要な、あるいは面白いと思われているトピックがあったら教えてください。

私は、仮想エージェントと恋愛関係を形成することのメリット、そしてそれが心理的ウェルビーイングを改善する潜在的な可能性に着目しています。
また、最近「萌え」という感情を定義する文化間比較研究のプロジェクトをスタートさせました。「萌え」はもともと日本のアニメやマンガなどサブカルチャーから生まれた概念で、私たちが人間以外のもの(たとえば仮想エージェントなど)と恋に落ちることがあるという現象を的確に捉えています。私の研究では、日本人もイギリス人も「萌え」という概念を理解することができるし、それを経験したことがあると報告しています。人が強く萌えを感じると、強い快の感情を感じるという結果も得られました。これらの研究結果より、萌えはポジティブな感情のカテゴリーに分類することができるとわかります。この一連の研究は、今日の世界で人々が架空のキャラクターとつながりを持ち愛着を抱く過程を特定するとともに、擬人化や関係の科学に新しい知見をもたらすものです。

なぜ東工大を選ばれたのですか?

私の研究の主な関心は心理学とテクノロジーの交わるところです。ですからテクノロジーの専門家とコラボレーションしたいと強く望んでいます。学際的な研究をおこなうことは研究の質を大きく高める可能性に繋がります。ですから異なる分野の研究者と協力することによって生じる化学反応(そしてそれによって触発される新しい研究)を見てみたい、と願っています。東京工業大学は世界でも一流のテクノロジーの大学で国際的な多様性を持っています。私は国際的なネットワークを広げ、一つの学術分野の中に居たのではつくりだせない新しい研究を育てていくことをとても楽しみにしています。

最後に小池先生と一緒に研究をしたいと思っている学生にメッセージをください。

私はロマンティックな擬人化という新しい概念を提示しました。擬人化とロマンティックな関係の交点、すなわち人間でないエージェントに、恋愛の文脈の中での人格を与えるということです。学生の皆さんには、皆さんの好奇心に従い、新しい研究分野を切り拓いてほしいと思います。全く新しい分野をゼロから創り出すのは一般的にはとても大変な仕事ですが、私の研究の発想は私自身が好きな活動や趣味から来ているので、新しい研究を育てる時間を私は心から楽しんでします。私の博士課程の指導教員が常々教えてくれたことは「次に来る」研究トピックをみつけること、そして次に進むべき方向にフラグを立てることは、研究者にとって研究を前に進めるためにとても重要なスキルであるということです。それは研究者に未来の研究の方向を示し、アカデミアの場で次に問うべき問いが何かを考えるよう導いてくれます。COVID-19の感染拡大の間私たちのライフスタイルはすっかり変わり、私たちは以前よりもずっと仮想世界に注目するようになりました。テクノロジーと仮想エージェントはすでに私たちの身近に居て、私たちはもはやそれらを抜きに生きることはできません。ですから、私たちが人間以外の存在(仮想エージェント)との関係において次の50年間にどのような問題、どのようなメリットに出会うと予想されるのか、そしてそれらと良い関係を築いて維持するためには何を知りどんな準備をすればよいのか、それらの問いを考えるべき時がまさに今だと思います。私の指導教員の言葉をそのまま皆さんに贈り、現在よりもよりよい未来の社会をともにつくりたい。そう願っています。
ぜひ一緒に、まだ私たちが見たことのない答えを探し求めましょう!

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