未来

効率のよい輸送ネットワークを国内外の研究者とともに考える

工学院 経営工学系 経営工学コース 
修士課程2年(2017年度)

黒木 祐子 さん

黒木 祐子さん

研究テーマを教えてください。
私は東工大の第7類に入学後、工学部 社会工学科に進み、現在は効率の良い輸送ネットワーク設計について研究しています。
論文名は「ハブ空港配置問題の近似アルゴリズム」(卒業論文)、「サイクルスター型ハブネットワーク設計問題に対する近似アルゴリズム」(学術論文)、「スタースター型ハブネットワーク設計問題に対する近似アルゴリズム」(現在執筆中)です。
研究分野としては、組合せ最適化です。
研究内容を教えてください。
ハブネットワーク設計問題は、多数の空港間で荷物や乗客の輸送をするときに、なるべくコストが小さくて済むような効率の良いネットワークを設計したい、あるいは、多数のノード間でデータの送受信があるような通信ネットワークにおいて効率の良いネットワークを設計したい、というモチベーションから30年ほど前からオペレーションズ・リサーチの分野で研究されているトピックです。
具体的には「多数のノード(空港)がある中でハブとなる乗り換えの中継地点をどこにすべきか」、また「ハブ以外の多くのノードはどのハブに接続するべきか」の意思決定を、輸送費用の最小化問題として定式化して、より良い解を求める研究です。より詳細に書くと、私はその最小化問題を解くときに現実的な時間で、ある精度が保証された解を出力することのできるアルゴリズムを研究しています。専門的には、この最小化問題は最適解を厳密に求めるにはノード数が多くなると、現実的な時間で解くことが難しくなります。そこで、最適解ではなくても近似的に良い解を高速に求める「近似アルゴリズム」が必要になります。私はその近似解が、最適解から最悪でどの程度離れているかを保証できる、精度保証付き近似アルゴリズムの研究をしています。
その研究の楽しさ・魅力を教えてください。
現実社会に生じている問題を数理的なアプローチで解決することができることが、この分野を専攻しようと思った理由であり、最大の魅力だと感じています。
現実社会で生じる問題の一つとして、私の研究では効率の良い輸送ネットワークの設計問題がありますが、その問題は数学的に最適化問題として定式化できます。このように現実社会の問題を数学的に捉えて議論できることが面白いと感じています。
研究の中では、アルゴリズムに対して理論的な保証を与えるための定理の証明も好きです。高校時代は一番苦手だったはずの数学が、今では研究の中心になっているのも不思議です。数学には色々な分野があることも大学に入ってから気づきました。現在は最適化理論やグラフ理論と呼ばれる応用数学の一分野について学んでいますが、自分の知らない理論がまだまだ沢山あり、もちろん難しいですが理解できるととても嬉しいです。他には、実際にアルゴリズムを実装するのも楽しいです。アルゴリズムの良さを計算機実験を通して検証する研究も、実際に目に見える形で結果を出せるので楽しいです。

研究自体だけでなく、自分の研究を他の人に伝えることも楽しいです。私は国内の学会をはじめ、海外の国際学会でも発表したことがありますが、自分の研究について議論する機会や、国境を越えて多くの研究者と交流できる機会があり、とても充実した研究生活を過ごしています。              
その研究の先にある未来・あなたが抱く夢を教えてください。
将来の夢は研究者です。私は小さい頃から社会問題の解決に携わりたいと考えていました。人工知能・機械学習・ビッグデータ解析などが現在注目されていますが、今の研究室で学んでいる「最適化理論」はそれらにも応用があり、かつその土台となる基礎の理論研究として重要な分野だと思います。東工大の大学院で基礎理論をしっかりと学んだ上で、今後は、社会における様々な課題を見つけ、その解決方法を理論に基づいて提案できるような研究を続けていきたいです。世の中の課題解決をサポートできる最適化技術をしっかりと身につけられるように、残りの大学院生活では存分に研究に打ち込みたいと思っています。

※記事の内容は取材当時のものです

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