経営工学系 News
平成31年3月から、小笠原浩太准教授が経営工学系に着任しました。新任に際しての抱負などをご紹介します。
写真:梅室博行(工学院 教授)
小笠原先生は平成29年1月まで、ここ東京工業大学経営工学系の助教でいらっしゃったので、学生の中には講義を受けた人もいるかと思います。その後、千葉大学にお勤めになり、このたび戻ってきてくださいました。
まずはご専門を教えてください。
専門は計量経済史(Cliometrics)です。「Clio」とは歴史を司るギリシア神話の女神で、それに計量分析の意を含む「metrics」が添えられています。経済理論や計量経済学の手法を用いて、現実に観測された経済発展や、その過程で生じる様々な社会経済問題のメカニズムを、実証経済学的に解明しようとする分野です。
いつの時代も人々は、歴史統計(historical statistics)として社会経済の様相を記録してきました。記録の範囲は、人口、生産、物価など、信じられないほど多岐にわたります。それら貴重な統計を電子化し、適切に設計した計量経済モデルの統計解析を通して、歴史がなぜそのように動いたのか、あるいはそのように動かなかった場合の仮想現実(counterfactual)について、経済学的見地から分析を行なっています。
先生の研究室で研究に取り組む学生にどのようなことを期待していますか?
誤解を恐れずに言えば、研究は頭でするものではなく、心でするものだと考えています。その意味で、学生さんには社会経済の現象について、自分なりの問題関心をもつことを期待しています。東工大の研究室で過ごす貴重な時間を、単に与えられた研究課題に関する作業に費やすのでは、とても勿体無い。自ら疑問に思ったこと、自分が大切だと考えている信念、そういった事柄を素直に受け入れながら、研究と自分自身に向き合う時間にして欲しいと思います。その過程を通して、自分が行った研究に責任を持つことができるようになるからです。
最後に今後の抱負を聞かせてください。
これまで研究成果を蓄積してきた分野で、引き続き世界最先端の発展的課題に取り組むこと。また、当該分野では導入が進んでいない統計解析の手法を積極的に取り入れることで、独創性のある課題に立ち向かうこと。そして、取り扱い可能な歴史統計の種類を増やすことで、より広範な社会経済的事象の分析に取り組むことです。