経営工学系 News

経営工学系の最も新しいメンバー 福田恵美子准教授に聞く

  • RSS

2016.12.06

平成28年10月から、福田恵美子准教授が経営工学系に着任しました。新任に際しての抱負などをご紹介します。

インタビュー:梅室博行(工学院 教授)、写真:箕輪尊文(工学院 経営工学系 修士1年)

福田恵美子 准教授

福田恵美子 准教授

まずは専門を教えてください。

研究分野はゲーム理論です。本学大学院の修士課程と博士後期課程の出身ですが、大学院時代は協力ゲームの理論的研究を行っていました。

前職(防衛大学校)では情報工学科で教えていたので、より実学に近い、実際に使ってもらえそうなシステムを対象に数値解析を行ったり、経済実験を用いたメカニズムデザインの研究も始めました。これまでは現実に用いられていたキーワードオークションが理論上望ましいとされるオークションとどのように違っているかを理論・実験の両面から調べたり、SNSなどの利用者が増えると便益が高まるようなサービスの普及に関する研究を行ってきました。最近では利用者が戦略的に来店時刻を選ぶような場合の混雑問題などに興味があります。またこれは学生時代から行っているテーマですが、投票力指数や提携形成モデルを用いて連立与党の安定性を検証する研究も行っています。

キーワードオークションの研究

キーワードオークションの研究

連立与党の安定性の研究

連立与党の安定性の研究

本学大学院の出身ですが、どのような大学院生でしたか?

武藤滋夫先生(名誉教授)の研究室の学生でしたが、先生をかなり困らせたと思います。研究室では女性が少なかったので、先生も周りの先輩も扱いに困ってらしたんじゃないかと思います。

ただ私は「同期運」が良いのだと思います。大学院に入った時も同期に女性が多く、また就職した時も同期に女性の教員が何人かいたので、横のつながりを持つことができて、そんなに寂しい思いはせずにすみました。

女子学生の話が出ましたので、東工大の女子学生や女性研究者がよりハッピーに勉学や研究ができるようにするために何かアドバイスをもらえますか?

福田恵美子 准教授

東工大に来て思ったのは、女性が過大に期待されているなということです。

私は女子校出身なので、女性が特別だという意識はまったくありませんでした。ところが東工大では、女性が少ないからということもあるのでしょうが、「女性だから辞めないでね」とか「女性だから大変なことも多いと思うけど」とか、「女性」という括りでひとまとめにして過剰に期待されている感じがしました。これは、大学院修了後の話も含まれますが、「こんな方もいらっしゃるのだからあなたも頑張りなさい」と、すばらしい女性の先生を引き合いに出されて励まされたりします。少し上の世代の女性研究者の方々は、ご結婚の年齢も早かったと思うのですが、出産もして子育てもして、そのあとメキメキ業績を伸ばして残られている、いわばスーパーウーマンが多いです。そのような方々と同等の活躍を期待されることは、いわばすべての東工大生にノーベル賞受賞者を目指せ、と期待されているのと同じようなものだと感じるのです。もうちょっと普通の状況でも、つまり、たとえスーパーウーマンでなくても、自分に負い目を感じることなく研究を続けていけたらいいと思います。

昨今、日本の晩婚・晩産化が顕著ですが、現在30~40代の女性研究者も、若い頃は男性と同じように研究をしてきた方が多いです。ところが、妊娠をして出産をすると、それまでの働きができなくなります。その時に、自分がダメになったような気がして、それで辞めてしまう方もいます。私自身も子供を産んで次の年くらいにそう感じました。妊娠・出産後、産休から復帰した後の期間はどうしたって業績数が落ちるのに、それが許されないことのようなプレッシャーを多くの女性研究者を感じているのではないかな、と思います。

なので、私は、とても難しいことですが、無理なことは無理と言えるように心掛けています。「妊娠前まで普通にできていたことが育児期間にはできないこと」を自分でも認められず、辞めてしまう方もいらっしゃいますし。

女性に限らず、健康や家族を犠牲にしてまで周囲の期待に応えられる人しか生き残れない社会だと、後に続く人がどんどん減ってしまう気がします。もちろん、必要以上に怠けるのはいけませんが、無理はしないように、を心掛けています。

大変重要な知見をありがとうございます。少し話題を変えて、趣味のようなものはありますか?

学生時代はよく映画を見にいっていました。就職してからは、肩の凝らない推理小説などを読むのが趣味です。若竹七海さんの作品はずっと好きです。推理小説ではないですが、八咫烏シリーズも好きです。

東工大にいらして、東工大の学生をどう思われますか?

研究室のティッシュカバー。卒業生の贈り物。

研究室のティッシュカバー。卒業生の贈り物。

真面目ですよね。私が学生だった頃より、外で言われているより垢抜けていて、今どきっぽいと思います。ただ、そういう今っぽい学生も一定の真面目さがあるなと思います。ただ真面目だから、ちょっと悩んじゃうんじゃないかな、という気もしますね。実は学生時代には先輩の悩み相談みたいなこともしていました(笑)

これから先生の研究室で研究に取り組む学生にどのようなことを期待していますか?

楽しくやって欲しいと思います。特に修士や学士課程では、論文のクオリティもさることながら、私はこんな研究がやりたい、ということが言えることが大切だと思います。「先生の持ちネタのどれかでいいです」とか「授業でゲーム理論が面白かったから、ゲーム理論で何かやりたいです」というよりも、自分自身で興味のある出来事があって、それにアプローチできないかな、と考えられるのが、楽しく続けられる秘訣のような気がします。

卒業研究、修士論文のテーマが必ずしも就職と直結しないかもしれませんが、そこで挫折しないためにも、だからこそ研究そのものを楽しんで、やりきった感を味わって欲しいです。 あと大学院の博士まで出た学生を採用する企業が増えて欲しいですね。防衛大学校にいるときに聞いたのですが、他の国の軍隊では博士の出身者がたくさんいるらしいんです。ところが日本では博士持ちが自衛隊の上層部にあまりいない。そうすると戻るところがないから、教育を受けさせられない、受けたくない、みたいになっている。民間企業でも同様な傾向がありますよね。そういったことも含めて、博士を持って仕事をする場所がもうちょっと無いといけないなと思いますね。

それでは最後に今後の抱負を聞かせください。

福田恵美子 准教授

研究も教育も、新しい事に手を出してみることを恐れずに、そして失敗を恐れずにやってみたいですね。ここでだと業績が出そうだからこの分野でずっとやっていこう、ではなく。博士後期課程を修了して就職してから全く新しいことも始められましたので。

出産してからは理論の研究に使える時間があまりなくなりました。その点は、海外でお子さんをお持ちの男性の先生も「そうだよね」と先日おっしゃっていました。理論研究は、集中して考えて、途中まで考えがまとまっても、最終結果が出るまでずっと没頭し続けなきゃいけない、というところがありますが、子供がいると必ず邪魔が入ります。だから道筋をつくってから積み上げていく仕事のスタイルに変わってきました。そのように、変化があってもなんとか活路を見出していけると思っていきたいです。

また、ここ数年は、理論班と実験班、解析班と数値計算班、といったように、ひとつのテーマについて他の研究者の方々と担当部分を分けて研究することも多いです。全部を自分で背負い込まなくても、できるところ、得意なところでチームに貢献したいと思うようになりました。生活のスタイルや気分が変わっても、研究対象や研究手法が変わっても、その都度、適応していけると信じて、変化を恐れずにやっていきたいと思っています。

どうもありがとうございました。

  • RSS

ページのトップへ

CLOSE

※ 東工大の教育に関連するWebサイトの構成です。

CLOSE