情報通信系 News

山田功教授が平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「科学技術賞(研究部門)」を受賞

  • RSS

2016.12.08

このたび、工学院 情報通信系の山田功教授が、平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰において「科学技術賞(研究部門)」を受賞しました。

「科学技術賞」は科学技術分野で顕著な功績をあげた者を対象としたもので、「開発部門」、「研究部門」、「科学技術振興部門」、「技術部門」、「理解増進部門」に分かれて表彰されます。

「研究部門」は、我が国の科学技術の発展等に寄与する可能性の高い独創的な研究又は開発を行った者が対象となります。

山田功 工学院 教授/学術国際情報センター長

受賞業績:非拡大写像の不動点表現に基づく信号処理に関する先駆的研究

山田功教授

山田功教授

信号処理は観測データから価値の高い情報を推定するための基幹技術として、古くはユークリッドの時代から現代に至るまで、常に強力な数理と共に発展し、今やほとんどの計測システムや情報通信システムに応用されています。現代の信号処理技術の多くは、ガウスの「最小二乗推定」やフーリエの「直交関数展開」の戦略を踏襲しており、「(線形代数で学んだ)部分空間を用いた情報表現」と「直交射影定理(ヒルベルト空間に拡張されたピタゴラスの定理)」を共通の土台としています。私たちは「部分空間では表現できない情報を精密表現する数理」と「最適化の数理」の融合が生む相乗効果こそが信号処理を飛躍的に進化させる鍵となることを確信し、この方針を土台に据えた普遍的アルゴリズムの開発を目標にしています。

凸解析学の目覚ましい進化のおかげで、「表現の困難さ故に、信号処理や逆問題の分野で効果的に活用されることのなかった重要な情報」の多くが、実は「非拡大写像の不動点集合(全ての不動点からなる集合)」として統一表現可能であることが解ってきました(図1、図2参照)。

図1 「非拡大写像の不動点表現に基づく信号処理」の例

図1 「非拡大写像の不動点表現に基づく信号処理」の例

図2 本研究が活用する非拡大写像とその不動点集合

図2 本研究が活用する非拡大写像とその不動点集合

本研究で開発された「ハイブリッド最急降下法」は、「不動点理論の数理」と「凸最適化の数理」の融合の賜物であり、世界で初めて「非拡大写像の不動点集合上の凸最適化問題」の解決に成功した汎用アルゴリズムです (図1)。さらに、このアイディアを大胆に拡張することによって、「適応射影劣勾配法」を開発し、「凸関数列の漸近的最小化問題」を解決することにも成功しています。これらは非拡大写像の不動点表現に潜む驚異的な情報表現能力を丸ごと信号処理機能に活かすための基幹アルゴリズムとなっており、数多くの逆問題や適応信号処理問題やオンライン学習問題に応用され、優れた性能が実証されています。

このたびは、長年取り組んできた研究を高く評価していただき、大変光栄です。一緒に研究してきた研究室の学生諸君や共同研究者の方々の多大な御協力に深く感謝しています。長い信号処理の歴史の中で本研究の真価が試されるのはまだまだこれからですが、ようやくスタート地点に立つことができたように感じています。これからも信号処理、最適化、逆問題の領域でよい研究ができるよう一層楽しんで参りたいと思っています。

  • RSS

ページのトップへ

CLOSE

※ 東工大の教育に関連するWebサイトの構成です。

CLOSE