情報工学系 News
スマートおしゃぶり「ユア パシファイファー」を開発
一般財団法人ジェームスダイソン財団が主催する国際エンジニアリングアワードであるジェームス ダイソン アワード2018(以下、ダイソンアワード)において、情報理工学院 情報工学系の長沼大樹さん(修士2年)を含む6名によるチームRota++(ロタ プラス プラス)が開発した作品「your pacifier(ユア パシファイアー)」が国内最優秀賞に決定しました。
赤ちゃんが脱水状態のときに、赤ちゃんへの水分補給を促し、保護者の取るべき行動をサポートすることを目的としたスマートおしゃぶり「ユア パシファイアー」です。
メンバーの1人がアジア・太平洋諸島で公衆衛生調査をした際に、下痢により危険な脱水症状にさらされている子どもが多数入院していることに気付き、その解決策を考える中で生まれたデバイスです。
おしゃぶりに付いているセンサーによって赤ちゃんの脱水状態を判定し、危険な脱水症状だと判断した場合には、モバイルアプリを通じて赤ちゃんの体全体の水分量を保護者に通知します。その際アプリ上で保護者に対して簡単な質問が出され、その返答内容によって警告を出し、例えば「病院に連れて行く」などの保護者が行うべき行動を指示します。さらに、ユア パシファイアーはユーザーのデータを収集し、その地域の同様の症状の流行を検出することができるため、その情報を病院が共有することで感染状況の分析にも役立てられます。
このユア パシファイアーは2017年10月にアメリカのスタンフォード大学で開催された「Stanford's Health Hackathon Health++ 2017(スタンフォード ヘルスハッカソン ヘルス プラスプラス2017」でも、総合3位と、Persistent-Neodesign(パーシステント ネオデザイン)賞の2つの賞を受賞しています。前回受賞時以降の変更点としては、センサーの原理検証および、筐体のデザインの改善策をいくつか試したことです。また、これまでの検証等をまとめ9月に行われる国内のシンポジウムにおいて長沼さんを始めとするメンバーによる発表が予定されています。
ダイソンアワードは、ジェームス ダイソン財団により、次世代のデザインエンジニアの支援・育成を目的として毎年開催されています。エンジニアリング(工学)、プロダクトデザイン、工業デザインを専攻する18歳以上の学生、卒業・修了して4年以内の方を対象として、今年は世界27の国・地域で開催され、1,300を超える作品が集まりました。
ユア パシフィアーを含む日本国内の上位3作品は、他国の作品とともに、ジェームス ダイソン アワードの国際ステージとなる第2次審査(9月下旬発表予定)に進み、そこでトップ20に入った作品がダイソン創業者であるジェームスダイソン氏による国際最終審査(11月中旬発表予定)へと進みます。
今回のプロダクトは、関西関東を中心とした学生メンバーだけからなるチームで昨年開発が始まったものですが、現在は社会人として働くメンバーもいるため、一度チームを解体しチームの再構成を行っています。
今後、課題である赤ちゃんの命を本当に救うためには単なるキャンペーンではなく、持続的なビジネスとして、製品を世に出していく必要があると考えています。実際にデバイスを製造し研究開発を進めていくには人も資金も必要になります。チームとしてはこのジェームズ ダイソン アワード受賞をきっかけに、アイデアに共感していただける世界のパートナーを募り、課題の解決に向かって突き進みたいです。
現在私は、深層学習の理論的側面の研究をしています。その研究がこのプロダクトのセンサーの精度向上などに寄与できるといいなと考えています。