経営工学系 News
経営工学系の青木洋貴先生にお話をうかがいました。
まずはご専門を教えてください。
フォーマルには、認知人間工学が専門と言う説明をしています。人間工学はひとにとって好ましいものを作り上げていくための学問ですが、この中で思考などの心理的な側面に着目をした分野が認知人間工学です。私は認知タスク分析(ひとの思考を含む行動を目に見えるようにして分析すること)を強みにしていて、この分析を医療(医師、看護師、臨床工学技士の技能・安全分析など)、消費者行動(購買行動・心理、広告、クリエイティブを対象とした人間工学研究など)、ユーザエクスペリエンス(システムユーザビリティ、審美性評価研究など)などと関連する問題解決のために適用をしています。
「フォーマルには?」、それはどういうことですか?
確かに、「専門は認知人間工学である」と言い切っていないような、回りくどい言い回しになっているように見えますよね。少し引っ掛かりがあるような...これにはちょっとした理由があるのです。私個人は、専門分野を「現代的な」IE(Industrial Engineering:インダストリアルエンジニアリング)だと位置づけているのです。ただ、私がやっていることと、一般的なIEのイメージとはギャップがあるために、他者に説明するときには認知人間工学が専門だと言っているということなのです。
IEって知っていますか?正確さを犠牲にした説明になりますが、IEとは、約100年前に、フレデリック・テイラーが「科学的管理法」と称した方法・実践から始まった、生産性向上のための方法・技術に関連する学術分野です。一般にはIEと聞くと、生産現場の改善のための技法をイメージする方が多いのです。このイメージは、私が研究で行っていることとは異なって見えますよね。
ここからが私の考えです。IEは、目に見えない、つかみどころがない生産活動を、なんとかして目に見えるように、とらえられるようにしていこう、そのための方法・技術(総称して管理技術といいます)を作っていこうという歴史を持っています。これを「可視化の方法・技術」開発の歴史と言っておきます。 皆さんご存知のように、社会は目まぐるしく変化しています。現代社会では、産業も、そこでの職務・仕事も、さまざまです。頭を使う仕事も多いですね。「生産性」自体のとらえ方も、多様になってきます。
こういう、現代の多様な産業に対しても、IEの歴史の中で先人たちがチャレンジし続けてきた「可視化の方法・技術」を作っていきたい、このことを通して現代のIEを作り上げていきたい、その一翼を担いたいというのが、私の目標です。ですので、伝統的にIEが扱ってきた対象である生産現場などではないものも、研究対象として取り組んでいるのですよ。学部の授業「インダストリアルエンジニアリング」でも、現代のIEについて、講義の半分くらいを使って説明していますから、興味があったら是非聴講してくださいね。
先生の研究室で研究に取り組む学生にどのようなことを期待していますか?
自分の専門・研究に誇りを持ち、主体的に、元気に過ごしてほしいと思っています。20代の貴重な時間を、大事に過ごしてほしいと思います。私はその時間を良いものにできるように、お手伝いをしたいと思います。
最後に今後の抱負を聞かせてください。
あまり偉そうなことは言えませんが。経営工学系の学生さんは、研究者という道ではなく、企業人という道を選ぶ人が多いと思っています。私たち経営工学を専門とする研究者は、日々の具体的な行動レベルに落とし込んで何をしているかという説明をすると、目の前で次々と起こる難しい現実の問題に対して、自分ができることや持っているリソース(スキル、知識、知的好奇心)で何ができ得るか、どう貢献できるかを考えて、実践をしているのだと、私は認識をしています。研究室でのこういった思考や実践を通して、学生さん、そして私も、どの世界に進んでも活躍できるように一緒に成長していくということを追求していきたいと思っています。