数学系 News
東京工業大学 情報理工学院 数理・計算科学系の梅原雅顕教授と理学院 数学系の山田光太郎教授が 科学技術に関する研究開発、理解増進等において顕著な成果を収めたとして、令和4年度科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)を共同で受賞しました。
科学技術賞(研究部門)は、科学技術の発展等に寄与する可能性の高い、独創的な研究または開発を行った者が対象です。令和4年度は48件(65名)が受賞しました。
表彰式は4月20日、文部科学省(東京都千代田区)で行われました。
受賞対象となった業績は以下の通りです。
受賞業績
新しい特異点の判定法の発見と新手法による特異点の研究
梅原教授とは30年あまりにわたり共同研究をしております。その成果をこのような形で評価していただいたことを大変に嬉しく思います。
1995年に梅原さんと共同で「日本数学会幾何学賞」をいただいた頃は、まだ国内で数学の共同研究は少なく、まれなこととして紹介された記憶があります。翻って現在の数学研究を眺めますと、さまざまなグループが多様な形で共同研究により豊かな成果を挙げており、研究の幅もますます広がっているようで、隔世の感があります。ありがたいことに、私達も多くの皆さんとの共同で研究を進めてくることができました。特異点の微分幾何学の研究は、ますます拡がってきております。まだまだやるべきことがたくさんありそうで、これからが楽しみです。今後ともよろしくお願い申し上げます。
専門は微分幾何学ですが、特に、ガウス曲率一定曲面あるいは平均曲率一定曲面と、その高次元化について研究しております。曲面は目に見える対象ですので、一見扱いやすく思えますが、実は大変奥が深く、研究テーマに窮することはありません。例えば、極小曲面(平均曲率が零の曲面)は古くから針金に張る石鹸膜のつくる曲面として知られ、複素関数論などと深く結びつき、現在でも未解明の問題が山積しております。
このような平均曲率零の曲面を、特殊相対性理論の舞台である3次元時空で考えると、曲面には、カスプ辺・ツバメの尾・カスプ状交叉帽子などの特異点(図)が頻繁に現れます。筆者らは、そのような特異点を簡単に判定する方法を与え、3次元あるいは一般次元の時空における平均曲率零の曲面および超曲面の研究に応用しました。また、これとは別に、与えられた曲面の特異点の情報と曲面のガウス曲率の積分との間に新しい関係式を見いだしました。これらの一連の共同研究が評価されたのだと思います。
3次元ユークリッド空間におけるガウス曲率が有界な曲面
および3次元時空の極大曲面に現れる代表的な3つの特異点