数学系 News
東京工業大学理学院 (現東京科学大学理学院) は9月9日(月)から9月11日(水)にかけて理化学研究所革新知能統合研究センター、東京大学大学院数理科学研究科、慶應義塾大学理工学部数理科学科との共催により、「数理情報系女子学部生サマーキャンプ」を開催しました。
キャンプは八王子市にある大学セミナーハウスにて行われ、全国の数学・情報系学部から38名の女子学部生
(うち本学在籍者1名) が参加しました。本キャンプは今回が初めての開催です。
以下にキャンプ開催の目的と当日のプログラム、参加者からのフィードバックについてご紹介します。
数学・情報系学部では、全国的に女子学生が少数派である状態が続いており、多くの大学では女子学部生徒の身近にロールモデルとなるような先輩は多くありません。特に、数学・情報系の大学院における女性比率は理工系分野の中でも低い状態にあります。本学理学院においても数学系の女子学部生の大学院進学率は過去5年間の合計で約1割にとどまっており、約9割が進学する男⼦学部生との間に大きな差があります。
このような状況は、女子学部生が大学・大学院での学修の進め方やその先に広がっている魅力的なキャリアについて、見通しをもって大学生活を送ることを難しくしており、本キャンプはこの問題状況にアプローチすることを目的として企画されました。数学・情報系分野の女子学部生に対して、同分野の大学院を修了した多様なロールモデルのもつ様々な経験や情報を伝え、大学を超えた交友関係を築く場を提供することで、大学さらにはその先の大学院での学びをより充実したものにしてほしい、大学・大学院での学びを活かして明るい未来を切り開いてほしい、そのような思いから、大学を超えたたくさんの方々の協力を得て本キャンプが実施されました。
キャンプは参加者の自己紹介とアイスブレークから始まりました。その後、約1日半にわたり、大学生活やキャリアに関する基本的な情報の共有、メンター参加者によるキャリア講演とパネルディスカッション、専門分野の学修や大学生活・キャリアなどについて相談できる夜ゼミおよび個別相談会、大学院生による研究についてのポスター発表など、多岐にわたるプログラムが行われました。学部生参加者はメンターとして参加した、数学・情報系分野を専攻する17名の大学院生 (うち本学在籍者2名) および同分野の大学院を修了した21名の大学教員・社会人 (うち本学在職者4名、本学出身者1名)とともに、プログラムを通して、大学・大学院での学びや過ごし方、卒業後のキャリアについての情報共有や意見交換を行いました。
アイスブレークの様子 | 基本情報に関する講演の様子 | |
グループワークの様子 | 大学院生による研究紹介の様子 |
最終日には、学部生参加者全員が、キャンプを通して考えた自身のキャリアプランおよび専門分野における興味について、グループに分かれてポスター発表を行いました。発表会では、たくさんの個性あふれる魅力的なポスターが作成され、それぞれの発表者が自信をもって発表を行っている姿が印象的でした。 発表後は、同じグループの他の参加者やメンター参加者から発表に対するフィードバックを受けました。 |
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学部生参加者によるポスター発表の様子① | ||
学部生参加者によるポスター発表の様子② | 学部生参加者によるポスター発表の様子③ |
キャンプ終了後のアンケートでは、学部生がもっている大学院やキャリアのイメージ、数学・情報系学部の現状、キャンプの成果など、今後の取り組みにつながるたくさんのご意見やご感想をいただくことができました。
<学部生参加者からの声>
* | 大学院についてより具体的にイメージできるようになったことで、大学院進学に対する不安や大学院に対するネガティブなイメージが軽減された。 | |
* | メンター参加者を見て、大学院で学ぶこと、研究することを楽しそうだと感じるようになった。 | |
* | 数学を学んだあとのキャリアについて具体的に知ることができ、想像していたよりも多様な選択肢があるということがわかった。 | |
* | 悩んでいることに対して具体的なアドバイスが得られた。 | |
* | 大学院についてより具体的にイメージできるようになったことで、大学院進学に対する不安や大学院に対するネガティブなイメージが軽減された。 | |
* | メンター参加者を見て、大学院で学ぶこと、研究することを楽しそうだと感じるようになった。 | |
* | 数学を学んだあとのキャリアについて具体的に知ることができ、想像していたよりも多様な選択肢があるということがわかった。 | |
* | 悩んでいることに対して具体的なアドバイスが得られた。 |
* | いろいろな人のキャリアについてのお話を聞くことができ、大学院修了後のキャリアを想像しやすくなった。 | |
* | いろいろな人と悩んでいることや数学に対する気持ちなどを共有・相談することができ、励まされた。 | |
* | 学部生、大学院生の現状や考え、抱える問題を知ることができ参考になった。 |
いただいたご感想の中には、女性が数学・情報を学習・研究したいという気持ちを共有しにくい環境があるという情報を含むものも複数あり、女子学生が楽しく安心して学修できる環境を整備することの重要性も改めて認識されました。
女性活躍の推進という政策課題が掲げられ、女性理工系人材の活躍が期待される一方で、理工系女子学生にとってのそれぞれの専門分野における身近なロールモデルの少なさは、分野の事情により1大学では解決が難しいことも多い課題です。今回のキャンプでは、大学を超えたたくさんの大学院生や教員・社会人のご協力により、将来の活躍が期待される学部生参加者に対して、同じ分野で活躍する多様なロールモデルとの交流機会とともに未来への視野を広げる学びを提供することができたと感じています。
本学理学院では、今後も他大学および企業との連携の輪を積極的に広げ、女子学生の学修環境を整備するとともにキャリア形成を支援する取り組みを継続して行きたいと考えています。
関係者の皆様には、どうぞご理解とご協力をお願いいたします。