James Gregoryの名を冠する有理数列 (OEIS: A002206) について多重ゼータの観点から再考する,というのが本講演の目的である.この数列は,例えばMascheroniが示したEuler定数の級数表示に用いられることに代表されるように,長い歴史の中で度々注目されてきた.時には第二種Bernoulli数と呼ばれることもあるが,古典的なBernoulli数と比べると,それほど多く語られてこなかったといえるだろう.今回の講演では,多重ゼータ関数の原点での漸近係数にGregory係数が現れること,そしてMascheroniの結果に立ち帰り,有限多重ゼータ値を考える枠組みとして導入された環AにおけるEuler定数の類似に関する考察について紹介したい.(一つ目の結果は村原英樹氏,小野塚友一氏,二つ目の結果は金子昌信氏,関真一朗氏との共同研究に基づく)