技術経営専門職学位課程 / イノベーション科学系 News

「DXの先にある社会:生成AI・ビッグデータとELSI/RRI」を開催

さまざまな立場で「責任ある研究・イノベーション」の推進」について討議

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2023.12.11

グループワークの様子

グループワークの様子

東京工業大学は、日本知財学会の共催のもと2023年11月16日、「DXの先にある社会:生成AI・ビッグデータとELSI/RRI」を田町キャンパス キャンパスイノベーションセンターにて開催いたしました。ELSIとは、「倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues)」のことで、科学・技術の発展により生じるこれらの課題をあらかじめ研究し対処する取り組みのことをいいます*。RRIとは「責任ある研究・イノベーション( Responsible Research and Innovation)のことで、研究からイノべーションまでの過程全体を通じて、多様なステークホ ルダーが参画し、社会のニーズや期待に合致するような形で科学・技術を推進するための取り組みのことをいいます*。当日は、研究者だけではなく、省庁や企業関係者など幅広い層から30名の参加がありました。
 第1部では技術経営、政策論、科学社会学、それぞれの立場からイノベーション研究に取り組んでいる研究者3名による講演が行われました。
 仙石慎太郎 東京工業大学教授は、「ELSI/RI/RRIフレームワークの運用−統合的アプローチに向けて−」というタイトルで書誌学的アプローチを用いた生成AIや遺伝子工学など新興科学・技術に対する社会的ガバナンスに関する先行研究の整理と課題の抽出、「市民」、「政府」、「自治体」、「産業界」および「学術界」の5つのステークホルダーと「持続的なイノベーション」、「オープンイノベーション」および「ビジネスモデルの変革」という3つの課題との関係に着目した次世代のイノベーションシステム・モデルの構築を提案しました。先行研究が明らかにしたRRI推進を我が国で推進していくためには、統合されたフレームワークをもとに、日本の状況・特性に適合させることが重要となってきます。
 白川展之 新潟大学准教授は、人文・社会科学から工学・医学まで多様な教員が集まっている地方総合大学の特色を活かした「弱さ(vulnerability)」という概念に注目した地域課題の解決を意識したELSI研究と社会への展開に取り組む体制とマネジメントの視座を中心にお話されました。総合知、すなわち、あらゆる分野の科学技術に関する知見を総合的に活用して社会の諸課題への的確な対応を図ることが求められています。「先見的イノベーションガバナンス」という最新の科学技術政策の概念と合わせて報告された内容は参加者に新たな気づきを与えるものでした。
 標葉 隆馬 大阪大学准教授は、「先端科学技術に関わる倫理的・法的・社会的課題(ELSI)に対する具体的取り組み」というタイトルで産業界、生活者、学術関係者および研究開発現場とのELSI/RRI議題に関する事例共有とノウハウ蓄積の重要性について、ニューロテクノロジーを巡る国際的な政策の動向や大阪大学社会技術共創研究センターでの活動を事例にお話されました。ELSIからRRIへ、リスクガバナンスからイノベーションガバナンスへの意識改革と実践は、大学はもちろん社会全体のすべてのステークホルダーが向き合うべき社会的課題であることがよくわかりました。
 第2部では第一部の講演者と東工大のリサーチ・アドミニストレーター(URA)がファシリテーターとなってELSI/RRIの実践について「政治」、「経済」、「社会」および「技術」の4つの視点から議論するグループワークを行いました。

*国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター(JST- CRDS)「科学技術イノベーション政策における社会との関係深化に向けて 我が国におけるELSI/RRIの構築と定着」2019年11月、p.i.

謝辞
本イベントは、開催にあたりJST COI-NEXT「誰もが参加し繋がることでウェルビーイングを実現する都市型ヘルスコモンズ共創拠点」(JPMJPF2101)の支援を受けて開催いたしました。

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