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注目の環境汚染問題を考える─「命ぬ水(ぬちぬみじ)」フィルム上映会&トークイベントを開催

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2023.06.27

上映風景

リベラルアーツ研究教育院(ILA)は2023年5月15日にフィルム上映会とトークイベントを開催しました。上映されたのは、「命ぬ水(ぬちぬみじ)」(琉球朝日放送)。本作品は、現在日本の環境汚染問題として注目されているPFAS(ピーファス/有機フッ素化合物)による沖縄での水源汚染問題を追ったドキュメンタリー作品で、沖縄復帰50年特別番組として2022年に放映されました。日本の大学機関で本作品が上映されるのは初めてことで、当日は学内外から多くの方が参加しました。


地域特有の問題ではなく、日本全体の環境課題として考える

関係者

(左上から)上映後のトークイベントに参加した本作品の共同ディレクター島袋夏子氏とジョン・ミッチェル氏、(左下から)ILAの中島岳志教授と司会・進行を担当した木内久美子准教授

PFASは、耐熱性に優れた性質を持ち、水や油をはじくことからフライパンなどの調理器具のコーティングや防水スプレー、泡消火剤などに使われている化学物質です。PFASは「フォーエバー・ケミカル」(永遠の化学物質)と呼ばれ、自然界では分解されないため、人体に取り込まれると血液中に蓄積するため、その有害性から健康におよぼす影響が懸念されています。

「命ぬ水」は、沖縄に駐留する在日米軍が使っている“泡消火剤”に含まれるPFASによる水源汚染について、基地問題に関する調査報道に長年携わる琉球朝日放送の島袋夏子記者と、フリージャーナリストで東京工業大学講師のジョン・ミッチェル氏が制作したドキュメンタリーフィルムです。米情報自由法(FOIA)を利用して得た米軍や米連邦議会資料、内部告発者から手に入れた映像や写真などが多用することで問題の本質に迫り、豊かな沖縄の湧き水を先祖代々利用している人々や、子供を通わせている学校の校庭の土壌汚染に戸惑う母親たちの声などが取り上げられ、日常と切り離せない生活の場が脅かされている実態を紹介しています。

フィルム上映会後のトークイベントでは、本作品の共同ディレクターである島袋氏とミッチェル氏のほかに、リベラルアーツ研究教育院の中島岳志教授が登壇。参加者からの質問に回答するほかに、最新の情報として土壌の調査結果、高い汚染が見つかり、住民の血中濃度検査も全国平均よりも1.5~3倍高いなど、状況がさらに悪化していることが共有されました。

上映風景

中島教授は東京の多摩地区でもPFAS問題が浮上している現状から、「沖縄特有ではなく日本全国の問題」と指摘。「長い年月をかけて土壌や地下水に蓄積されている。かなり長い時間をかけて東京に起きている自分たちの足元にある問題。沖縄と自分たちと連携し、どう解決していくのかを考えるのが重要なのではないか」と述べました。

島袋氏も「沖縄からの発信に始まり、自分たちの飲み水をどうするかという共通の課題になっている。(沖縄と本土の人たちが)同じ立場としてこの問題を考えていく必要がある」とし、「基地内の立ち入り調査ができないのは沖縄が顕著だが、本土では調査を行ったところもある。制度を変えていくこともできるのではないか。一方で、PFASの有害性が指摘されていながらも代替品の消火剤ができない限り使用してよいことになっている」と、この問題の複雑性についても触れました。

ミッチェル氏は「SDGsの視点で話すと、PFASの汚染は非常に大きな範囲に及んでいる」と語り「健康や飲料水、海と陸の生物に影響を与え、人権にも影響をおよぼすなど、さまざまな分野を汚染している。これらの問題解決のために、あらゆる分野で協力する必要がある」とし、「東工大の学生はこの問題に関心を持って解決に力をかしてほしい。皆さんこそが希望です」と、東工大での本作品上映の意義を語りました。

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