材料系 News

神谷・片瀬研究室 ―研究室紹介 #65―

世界を席巻する新しい機能材料を創る

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2017.10.03

材料系では「金属」「有機材料」「無機材料」の3つの分野にフォーカスし、独創的かつ挑戦的な研究・開発を推進しています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、計算機科学を駆使しながら新しい機能材料の設計、電子構造の解明および電子機能デバイスの開発を行う、神谷・片瀬研究室です。

教授 神谷利夫、准教授 片瀬貴義、助教 井手啓介

無機材料分野
材料コース
研究室:すずかけ台キャンパス R3D棟 102号室
教授 神谷利夫、准教授 片瀬貴義、助教 井手啓介

研究分野 新無機機能材料開発 / 材料科学 / 半導体デバイス / エネルギー材料 / 環境発電デバイス
キーワード 酸化物エレクトロニクス、太陽電池、発光デバイス、ディスプレイ用デバイス、電気化学、超伝導、熱電変換、薄膜人工超格子、計算機シミュレーション
Webサイト

神谷・片瀬研究室別窓

神谷利夫 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

片瀬貴義 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

井手啓介 - 研究者詳細情報(STAR Search)別窓

はじめに

実用化されて世界を変える新材料を生み出す

既存のよく知られたSiなどの半導体では、低コスト高効率の太陽電池や超大型有機ELテレビ・フレキシブル透明ディスプレイの作製に限界があります。当研究室は、今まで使われてきた電子材料とは全く違った材料系を自ら見出し、今までは作れなかった光・電子・エネルギーデバイスに挑戦しています。その一例とし、25年以上使われてきたアモルファスシリコンに変わる高性能な材料である“IGZO”を開発し、今では大型有機ELや液晶ディスプレイとしての量産に至りました。IGZOに続き、実用化されて世界を変える新材料をさらに我々の手で生み出すことを目的としています。材料設計を大きな武器として用い、太陽電池・トランジスタ・熱電変換素子・発光素子&レーザーなどのありとあらゆる環境デバイスの劇的な能力向上に挑戦しています。

研究内容

使える新しい機能材料とデバイスの開発

例1. アモルファス酸化物半導体

2004年以前は、Si、GaNやZnOのような結晶でないと「良い半導体」はできないと信じられていました。それに対して私たちは、In-Ga-Znを成分とする酸化物IGZOが、アモルファスであるにもかかわらず、高性能のトランジスタを作れることを実証し、図1(左)のような透明でフレキシブルな高性能トランジスタを発明しました。この技術は、iPad、Surface Pro4や77型有機EL TVなどに使われています。さらに最近では、図1(右)のように、世界で初めて無機の発光薄膜の室温形成に成功し、有機ELを超える新しい発光デバイス・ディスプレイの実現も視野に入ってきました。

図1. (左)IGZOを使った透明フレキシブルトランジスタ、(右)室温でガラス上に作れる無機発光薄膜

図1. (左)IGZOを使った透明フレキシブルトランジスタ、(右)室温でガラス上に作れる無機発光薄膜

科学者の常識を覆す新しい機能材料

例2. 共有結合を利用して、絶縁体のはずの材料を透明導電体にする

図2. 量子計算で描いたSrGeO3の波動関数

図2. 量子計算で描いたSrGeO3の波動関数

酸化ゲルマニウムは6 eV以上の大きなバンドギャップを持ち、非常に良い絶縁体として知られています。しかし、図2のような量子計算によって電子構造を正しく理解すると、立方晶構造のSrGeO3はバンドギャップが2.7 eVへと極端に小さくなり、良い透明導電体になることが分かりました。このように、計算機シミュレーションを援用することにより、物質に関する新しいセンスを身につけ、画期的な新材料を開発できます。

今まではできないと信じられてきた材料を実現

例3. バンドギャップが4 eV以上のアモルファス半導体

図3. 室温で作れるワイドギャップ半導体

図3. 室温で作れるワイドギャップ半導体

上でも述べたように、アモルファス半導体の特性は良くないと信じられてきました。私たちはこの迷信をAOSによって覆したわけですが、次には「バンドギャップの大きいアモルファス半導体は作れない」という迷信がありました。私たちは、アモルファス酸化物におけるドーピング機構と欠陥をきちんと理解することにより、バンドギャップ4.12 eVのアモルファス酸化物半導体の開発に成功しました(図3)。

微少な熱から高効率にエネルギーを創る新材料

私たちの身の周りには「熱」という無限のエネルギーが至る所に存在しますが、現在は使うことができていません。微少な熱を電気に変えてエネルギーを回収できる新材料を創れば、電池を必要としない電子通信デバイスをあらゆるモノ・場所に配置するIoT社会が実現できます。このような高効率・超省電力デバイスを実現するため、当研究室では、超精密な薄膜化技術(図4)を利用して、新しい発想とメカニズムによって従来の性能を大幅に超える創エネ材料の研究を進めています。

図4. 超精密な薄膜合成法と超原子平坦薄膜

図4. 超精密な薄膜合成法と超原子平坦薄膜

コンピュータ支援を利用した材料科学と材料設計

上述のような新材料は、行き当たりばったりに材料合成をしても見つけることはできません。当研究室では、量子計算やデバイスシミュレーションなどのコンピュータ支援と材料研究者としての閃きによって「使える新材料」の研究を進めています。

教育方針

  • 細野・平松・松石研究室と協力して研究をしています。
  • 当研究室は、物理・電気・化学など、異なる学科の卒業生ばかりです。入学後にゼミ・輪講・研究室内の個別講義などを通じて、研究を進めるのに必要な知識を学んでいきます。新しい分野に挑戦するのに最適な環境です。
  • 教科書を読むだけではなく、データベース、計算ソフトなど、コンピュータ支援を積極的に使い、電子構造、物性物理、デバイス動作機構等を学んでいきます。
  • 電子材料・環境・エネルギー分野に関連した研究開発に必要な技術と知識を学ぶことができます。
  • 私たちが独自に培ってきた材料設計の考え方を学び、実際の研究開発にどのように応用するかを習得していきます。
  • ゼミは10名程度の少人数で行います。そのため、十分な時間を取って、学生が自分で考えるとともに、専門的な考え方を学ぶことができます。

教育方針

活躍する学生

国内だけでなく、国際学会においてもその研究と発表が認められ、毎年多くの学生が受賞しています。

  • 学生が筆頭著者の英語論文数 10報(2016年)、10報(2015年)
  • 学生の受賞

    2016年度 M2 岸田さん
    International TFT Conference 2016、 Poster Paper Award
    2016年度 D3 Kimさん
    応用物理学会 講演奨励賞、井上研究奨励賞、物質科学創造専攻土肥賞
    2016年度 M2 Tangさん
    物質科学創造専攻土肥賞
    2016年度 D3 Xiaoさん
    物質科学創造専攻土肥賞
    2015年度 D2 Kimさん
    薄膜材料デバイス研究会スチューデントアワード
    2015年度 D2 Crisさん
    TOEO9、Gold Award
    2014年度 M2 石川さん
    薄膜材料デバイス研究会スチューデントアワード
    2014年度 B4 Johanessさん
    International TFT Conference 2014、EPL Poster Award
    2013年度 M2 大類さん
    International TFT Conference 2014、EPL Poster Award
    2013年度 D1 佐藤さん
    応用物理学会講演奨励賞

活躍する学生

材料系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 神谷利夫
すずかけ台キャンパス R3棟 310号室
Tel : 045-924-5357
E-mail : tkamiya@msl.titech.ac.jp

准教授 片瀬貴義
すずかけ台キャンパス R3棟 314号室
Tel : 045-924-5855
E-mail : katase@mces.titech.ac.jp

助教 井手啓介
すずかけ台キャンパス R3-D棟 102号室
Tel : 045-924-5855
E-mail : keisuke@mces.titech.ac.jp

※この内容は2016年4月発行の材料系 無機材料分野パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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