電気電子系 News

2023年度学士優秀学生賞 受賞!― 松田 達也さん(小寺研究室)―

量子ドット間の電荷ノイズ相関測定

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2024.04.15

今回、電気電子系85名の中から9名が、特定課題研究に関する優れた論文発表を行い、この賞を受賞しました。受賞者にインタビューです。

小寺 哲夫准教授(左)、松田 達也さん(中央)、米田 淳特任准教授(右)奥は研究に用いた冷凍機、左は測定機器。

小寺 哲夫准教授(左)、松田 達也さん(中央)、米田 淳特任准教授(右)
奥は研究に用いた冷凍機、左は測定機器。

この研究はどんな内容で、どのように世の中の役に立つことが期待できるのでしょうか?

私の行った研究は、量子コンピュータへの応用が期待されるシリコンスピン量子ビットのノイズ相関に関するものです。シリコンスピン量子ビットを実装するシリコン量子ドットデバイスにおいて、複数の量子ドットの間のノイズ相関を効率的かつ多様な条件下で測定することで、量子ビット間のノイズ相関の特性を理解することを目指して研究を行いました。このような量子ビット間のノイズ相関特性を把握することで量子誤り訂正符号の実装に一歩近づき、社会に大きな影響を及ぼす誤り耐性型汎用量子コンピュータ実現に貢献することが期待されます。

量子コンピュータは超高速の計算可能性で近年注目を集めている技術です。この量子コンピュータを実現するための様々な方式、物理系が考案され、日夜研究されています。なかでも小寺研究室では半導体に注目した量子コンピュータの研究を行っています。特に、シリコン中に0次元的に電荷を閉じ込め(量子ドット)、電荷がもつスピンを量子ビットとして用いるシリコンスピン量子ビットに注目しています。

多様かつ複雑で大規模な実問題を高速に解きうる誤り耐性型汎用量子コンピュータには、量子誤り訂正符号の実現のために大規模化する必要があります。研究対象であるシリコンスピン量子ビットは、既存の半導体集積技術により集積性に優れていると目されています。しかし、その占有面積の小ささから量子ビット間距離が近く、相関を持ったノイズが加わりやすいことが近年の実験で指摘されています。相関を持ったノイズは、量子誤り訂正効率の低下に繋がり、大きな問題になりえることから、ノイズ相関の特性を理解することが重要となります。さらに誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現にむけて、将来的に100万個程度の量子ビットを集積することが想定されるため、大量の量子ビットに対しノイズ相関特性を効率的に評価する必要もあると考えられます。

本研究ではシリコンスピン量子ビットの大規模化に向けてノイズ相関の特性を効率的に評価することを目的としました。具体的には、スピン干渉効果に基づく従来法とは異なり、デバイスを流れる電流に乗ったノイズを解析することで相関の評価を行いました。これにより、従来法よりも短時間で効率的に測定でき、より多様な条件下で測定可能です。この方法は主要なノイズ源として電荷ノイズを想定した測定方法となっていますが、シリコンスピン量子ビットでは電荷ノイズが支配的という先行研究を踏まえると、適切に特性を評価できることが期待されます。実験ではまず、2量子ドット間におけるノイズ相関の周波数依存性について調べ、少数の電荷ノイズ源を仮定したモデルで説明可能であることが分かりました。次にドット間距離の異なる2つの量子ドットを用意し、ノイズ相関の距離依存性について調べたところ、こちらも同様に電荷ノイズ源のモデルで説明が可能と分かりました。以上の測定結果から、本測定におけるノイズ相関測定の妥当性及び簡易性が示されたと考えています。最後に従来法では難しいとされる二重量子ドット準位差の直接的な相関とその温度依存性も測定し、本測定の利点も示しました。

本研究で実証した測定法を用いて、将来的に簡易的なノイズ測定を幅広い条件下で行っていくことにより、大規模シリコン量子コンピュータのアーキテクチャーの構築への寄与が期待できると考えています。

受賞の感想

この度は学士優秀学生賞という名誉ある賞に選出していただき、大変光栄に思います。研究室配属からのこの1年間、小寺研究室で忙しくも充実した勉強の毎日でした。研究が上手くいかずに大変な時期もありましたが、先生方のご指導や、小寺研究室の皆さんのご支援、友人や家族のサポートがあったからこそ、この研究は実を結んだのだと思います。この場で改めて皆様に感謝申し上げます。

私自身は修士課程に進み、これからも研究を続けていきますので、今以上に素晴らしい研究成果を出していきたいです。学内のみならず国内外で幅広く活躍できる研究者を目指していきます。また、研究や日々の研究生活等の様々な面で研究室に少しずつ恩返しできたらとも考えています。
これからも日々精進していきます。

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