電気電子系 News

水本・庄司研究室 ―研究室紹介 #8―

異種材料集積技術を用いた光集積回路

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2016.07.08

電気電子系では、最先端の研究施設と各分野で活躍中の教員の直接指導により、学生でも世界に誇れる研究成果を出し、自分自身で発表することができます。電気電子系には、大きく分けると「回路」「波動・光および通信」「デバイス」「材料・物性」「電力・エネルギー」の5つのグループがあります。各教員はいずれかのグループに所属しており、研究室単位での研究が行われています。

研究室紹介シリーズでは、ひとつの研究室にスポットを当てて研究テーマや研究成果を紹介。今回は、高機能な光波回路の実現を目指して光集積回路の開発を行う、水本・庄司研究室です。

教授 水本哲弥 准教授 庄司雄哉

波動・光および通信グループ
電気電子コース
研究室:大岡山キャンパス・南9-906
教授  水本哲弥別窓  准教授  庄司雄哉別窓

研究分野 光回路工学、電磁波回路
キーワード 光ファイバ通信、光集積回路、オンチップ光配線デバイス
Webサイト 水本・庄司研究室別窓

主な研究テーマ

高機能な光波回路の実現を目指して、光集積回路の開発をメインテーマとして研究を行っています。特に、光アイソレータと光能動素子の集積化、シリコン光回路を中心とする光デバイス集積化による高機能な光回路の開拓、およびその技術を応用したオンチップ光配線用波長選択スイッチの製作といった研究を推進しています。

最近の研究成果

高機能な通信システム・光信号伝送システムを構築するために、光回路の高機能化が求められています。高機能な光回路の形成には、光源である半導体レーザ、光波制御用の光変調器、光スイッチ、合分波器など、多種多様な光デバイスが必要であり、多くの光回路デバイスを一体集積化した光集積回路の開発が重要な鍵を握っています。
光アイソレータは、半導体レーザや光増幅器などの光能動デバイスへの反射戻り光の再入射を防止し、能動デバイスの安定動作に必要不可欠な光デバイスです。また、光回路中において不要な逆方向伝搬を防ぎ、光回路を所期の特性で動作させるために重要な働きをします。光集積回路の構成に必要不可欠な導波路型光アイソレータを開発するとともに、光アイソレータを半導体レーザや他の光回路デバイスと一体集積化する技術の開発を進めてます。特に、光アイソレータを実現するためには磁気光学ガーネットが必要不可欠で、半導体レーザなどの光能動デバイスと光アイソレータを一体集積化するためには、半導体上に異種結晶・磁気光学ガーネットを一体集積する技術を開発することが重要な鍵となります。本研究室では、異種結晶を直接貼り合わせるダイレクトボンディング法を開発して、これを実現しています。

集積型光アイソレータ

集積化を達成するために、光アイソレータの形成に必要不可欠な磁性ガーネットを半導体導波路に直接接合する技術(表面活性化直接接合)を開発し、光アイソレータ集積型半導体レーザの開発をすすめています。また、光回路の小型化やSi-LSIの光配線で注目されているシリコンフォトニクス用の光アイソレータの開発も進め、シリコン光回路としては世界初の光アイソレータの動作実証に成功しています[1]。その消光比や動作帯域では世界最高水準を達成し、当分野をリードする研究を行っています[2][3]。また、これを基に、シリコン光集積回路の開拓も進めています。

Si導波路光アイソレータ

Si導波路光アイソレータ
[1] Y. Shoji, T. Mizumoto, et al., APL, 92, 071117 (2008).
[2] Y. Shirato, Y. Shoji, T. Mizumoto, OFC 2013, OTu2C.5..
[3] Y. Shoji, Y. Shirato, T. Mizumoto, JJAP, 53, 022202 (2014).

動作特性

動作特性

近年スーパーコンピュータやデータセンターにおける処理容量の増大のため、チップ間やボード間といった短距離の光通信応用に対する需要が高まっています。これまでは、単に電気配線をシリコンなどの光導波路へ置き換える研究が進められてきましたが、光導波路は電気配線に比べて回路の占有面積が大きいため、光信号の波長多重技術が重要となります。(波長多重技術を用いると、一本の光導波路に複数の光信号を伝送することができます。)
こうしたオンチップ光配線の次段階として考えられているのが「オンチップ光ネットワーク」の構想です。現在検討されている光配線がポイント・ポイント間の一対一の通信であるのに対し、オンチップ光ネットワークではチップ(またはボード)上にメッシュ状のネットワークノードを構築し波長単位で信号の伝送先を割り当てることで、CPUやメモリ間の通信において柔軟かつ安定な信号伝送を実現できます。このような背景をふまえて、シリコン基板上に集積可能な波長選択光スイッチを提案し製作を行っています。

オンチップ光配線デバイス

オンチップ光ネットワークの概念図

オンチップ光ネットワークの概念図

シリコン基板上で波長多重された光信号を、波長ごとに経路選択し分配する機能を備えた波長選択スイッチの製作を行っています。特徴として、リング共振器による波長分波とマッハツェンダー干渉計による経路選択により、低いクロストークレベルの伝送特性が期待されます。

これまでの成果として、シリコン細線導波路を用いて波長選択スイッチを作製し、4チャネル波長毎のスイッチング特性の実証に成功しています[4]。リング共振器は、リングの直径で分波する波長間隔(FSR)を設計し、バス導波路との結合の強さでフィルタとしてのシャープさが変化します。本デバイスでは、波長1,550nm帯の信号に対し、8チャネル(波長間隔:4nm)の信号分配をターゲットとしており、将来的には40チャネル(波長間隔:0.8nm)までカバーする動作を目指しています。

シリコン細線導波路を用いた微小リング共振器のSEM像

シリコン細線導波路を用いた微小リング共振器のSEM像

世界最速を達成したミリ波無線機

シリコン波長選択スイッチのスイッチング特性の測定結果
[4] K. Miura, Y. Shoji, T. Mizumoto, IPC 2012, WZ3.

教員からのメッセージ

水本先生、庄司先生より
光技術は、光ファイバによる長距離信号伝送にとどまらず、ユーザへのアクセス系も含めた通信システムで広く使われる技術として発展を続けています。そして、コンパクトな光伝送路や光配線で、高速・大容量な信号伝送が可能であるという光信号伝送の特徴を活かして、コンピュータ間、コンピュータ内のボード間、ボード内のチップ間の信号伝送へ導入されつつあります。さらに、チップ内の信号伝送も光化するシリコンフォトニクスの研究開発が加速されています。
このような背景の中で、光信号を適切に制御し、処理する光回路の機能性を高めることはますます重要になってきています。本研究室は、光デバイスの集積化によって機能集積化された光回路の開発を目標に研究を行っています。研究テーマは、これに関する内容を包含しており、最近の修士研究テーマは「シリコン導波路型光サーキュレータの研究」、「導波路型光アイソレータ製作のための異種結晶ダイレクトボンディングに関する研究」 、「自己保持型光スイッチ関する研究」、「オンチップ波長選択スイッチに関する研究」です。わくわくするような研究がやりたい人、好奇心旺盛な人、大歓迎です。

電気電子系の全研究室を紹介したパンフレットは広報誌ページでご覧いただけます。

お問い合わせ先

教授 水本哲弥
E-mail : tmizumot@pe.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2578

准教授 庄司雄哉
E-mail : shoji@ee.e.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2578

※この内容は2016年3月発行の電気電子系パンフレットPDFによります。最新の研究内容については各研究室にお問合せください。

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